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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』第3話

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前回(2話)・次回(4話)

目次

前書き

 このお話は『小学館ライトノベル大賞』の一次通過、二次落ち作品です。結局のところは落ちたお話なので、そういう心意気で読んでくださると嬉しいです。

 本日は三話連続更新でした。明日もこれくらいのペースを保てると良いのですが。努力は前向きに……

 ということで、早速本編です。

 龍と奏でる英雄譚――3話

 そこにいたのは、騎士甲冑に身を包んだ、眉目秀麗を擬人化したような容貌の人物。薄紫色の頭髪が、主人の性格を象徴するかのように規則正しく切り揃えられている。
「げ。バロックアートか」
思わぬ人物――バロックアートの登場に、ラウルは疑問を投げかける。
「あんたみたいなのが、こんな酒場に何の用だよ?」
「少し、情報を収集していてね。そういうキミこそ、その刃で何をするつもりかね?」
「あ? 別に、普通に持ち主に返すだけだが……」
「ふっ、笑止! 先のキミの行動を見る限り、そのような善行を行うようには到底思えないんだがね? その刃で以て、男性に止めを刺そうとしている、の方が正解に近しいのではないのかな?」
 ラウルはバロックアートの性格をよく知っていた。故に、バロックアートの言いたいことは、あちらが何も言わずとも理解できた。バロックアートが言っているのは、おそらく、
「キミは先の決闘にて、十分に勝利していた。だというのに、キミは無抵抗の男性に対して、容赦のない蹴りを見舞った。ああ、実に――恥ずべき行為だとも」
「わかってるだろうけどな? ああしないと、その男が……」
 台詞を言いかけ、けれどもラウルは諦めた。
 反論の無為を悟ったからだ。
 バロックアートはラウルの存在を快く思っていない。ラウルを排斥する為にならば、幾らでも強引に理由を付けてくるだろう。
 何せ、ラウルは『無名』なのだから。
 この酒場にいる者で、ラウルの素性を知っている者は、誰一人として彼の存在を快くは思っていないだろう。王国の恥曝し――ラウル・シーンスはそう呼ばれているのだから。
 先の闘争にしても、片方が刃を出したというのに仲裁が入らなかったのは、王国民にとって、ラウルは見捨てても構わない命であったからだ。
「ボクはね?」と、バロックアートは芝居がかった調子で主張する。
「ボクと同じ――英雄が、民を攻撃したという事実が許せない。だってそうだろう? ボクたちは世界を守護する英雄だ。その守護者たるボクたちが、守護するべき民に刃を向けるだなんてあり得てはいけない」
 バロックアートの言葉に、客たちが同意の大喝采を上げる。波のような声を受け、バロックアートは酔いしれたような笑みを顔に刻み込んでいる。
 バロックアートが、静かに腰の剣へと手をかけた。
「そもそもだ。ボクはキミの存在を好んでいない。六人しかこの世に存在できない英雄……その中に、キミのような面汚しがいると、ボクの存在の格に傷が付く」
 結局、それが全てなのだろう。
 バロックアートは、ただ難癖をつけてラウルを斬りたいだけなのだ。自身の名誉に、欠片でも汚点が付着することが耐えられないのだろう。
「民を傷付ける悪しき英雄擬きには、このボク……剣の英雄――バロックアート・クローバーが天誅をやろう」
 酒場の客たちは、思わぬタイミングで発生した英雄同士の戦闘の気配に、歓喜の叫び声を轟かせる。音楽国家の名に似つかわしくない、悍ましい歓声。
 客観的に見ると、ラウルの行動は正当防衛以外の何物でもない。正しいのはラウルの方であるというのは、本来ならば誰の目からも明らかだ。
 だが、今回は違う。
 英雄の中の英雄であるバロックアートの言葉は、千の理不尽すらをも斬り捨てる。バロックアートの言うことは、即ち、神の啓示も同様だ。
 一方のラウルは、この国随一の恥部。無名の英雄なのだから。通常時だって誰も彼の言葉になど耳を貸さない。
 今回の場合、正当性は、少なくとも民の視点から見た正当性は、バロックアートの方にある。
「あんたはオレを虐めて、自分の苛々の解消。で、ついでに人気取り、と?」
「ふっ、有りもしないことをよく言えるね。難癖を付ける天才だな、キミは」
 それはあんたの方だろ、という言葉が口から出るのをラウルはどうにか抑えた。
 諦めに似た感情で、ラウルは腰に帯びた短剣に指先を触れさせた。
 直後。
 ラウルの全身が衝撃によって吹き飛ばされた。
 巨大な拳で横凪に弾かれたかのような、言い表しようのない感覚。知覚できたのは、圧倒的な力で殴打されたということだけだった。
 空中で大量の血を吐き出すラウルは、次の瞬間には壁に叩き付けられていた。
「おやおや、ボクはまだ剣も抜いていないよ?」
 満身創痍のラウルとは対照的に、バロックアートは余裕を貼り付けた笑みを湛えたまま、悠然と直立している。その姿勢は正に、一本の刀剣のようだ。
 再び、バロックアートが軽く柄頭をなぞる。
 莫大な質量が、ラウルの背に叩き込まれた。
 壁が爆散し、耳を覆いたくなる程の爆音が発生する。
 それでもなお、バロックアートは追撃の手を休めない。歩き、血塗れのラウルの元へと寄っていく。途中、見惚れるような凜々しさで、自身の刀剣を鞘から抜き取った。
 決着の予感を感じ取って、酒場は敗者を笑う者で溢れた。客は口々にラウルを罵り始める。
「恥曝しの無名!」

「国の汚点!」

「何の力もない、無名」

見世物小屋にでも入れてもらえ! お前にはそれがお似合いだ」

「クズ!」
 散々な罵倒がラウルを苛む。それらの言葉は、既に耳が腐りそうになるくらいに聞いてきた。何度聞いても、一向に慣れる気配はない。
 勝手に期待して、勝手に裏切られたと主張して。
 だから、ラウルは期待されることが嫌いなのだ。
 地面を無様に転がるラウルを、バロックアートはゴミを見るような冷たい瞳で観察している。が、やがてそれにも飽きたのか、観客の声に応えた。
「ボクの剣で斬られること、光栄に思うと良いさ。同じ英雄が、無様に殴られるだけで死ぬのを見るのは、ボクとしても嫌なんだよ」
 そうして、バロックアートの剣が、ラウルの首に触れた。

 

   ▽

 

前回・次回

前回(2話)・次回(4話)

 

反省会

 英雄の設定がちょい出しされ、ラウルの素性もほんの少しだけ開示されるこの話。

 小出し過ぎな気もしています。あまり序盤から説明ばかりだと退屈だろうとの考えではございますが、上手く機能していないように思われます。

 どうでしょうか?

 一応、剣の英雄であるバロックアートは周囲から崇拝されており、無の英雄であるところのラウルは周囲から軽蔑されている、といった図です。差別対象と崇拝対象との差異を描き、かつヘイトエピソードを挿入することにより、後の展開のカタルシスを引き出す布石にしようという思惑でした。

 が、これが上手く行っているのかがまったく解りません。この先の展開を知らない読者さんとわたくしとでは、やはり感じ方が変わってくるかと思われます。そういう意味では、読者さん目線のお話の書き方が足りていないのかな、と。

 また、説得力を増すための文書力・表現力が不足している気もします。これは読書と写経などをはじめとした勉強で、地道に補っていくしかありませんよね。

 読者さん目線を手に入れるためには、どうしたら良いのか。深く考えていく必要がありますね。