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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』5話

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前回(4話)・次回(6話)

目次

 前書き

 こんにちは、束木志埜です。

 このお話は『第十一回小学館ライトノベル大賞』の一次落ち、二次落ち作品です。この紹介にも飽きてきたので、何か他に良い文章はないものか、現在探っております。

 では、早速本編です。

 

龍と奏でる英雄譚――5話

 結果として、ラウルはどうにか許された。本来、彼に非はなかったのだが、この国の価値観に照らし合わせると、罪はラウルの方にあったのだ。……理不尽なことではあるのだが。
 少女の歌に感銘を受けたらしいバロックアートは、ラウルの処断を寸でのところで中止した。曰く、「彼女の舞台を、キミのような者の血で穢したくないからね」とのことである。
 ラウル的には吉報に違いない。だが、自身の生命が少女の歌に劣るという事実に、中々の葛藤が生じた、ということだけはここに記載しておこう。
 酒場は宴会の様相を呈しつつあった。
 思わぬ歌姫の誕生に、酒場は歓迎の相好を隠さない。
 バロックアートなどは、強力な奏唱師を仲間に引き入れようと、口説き文句を永遠と並び立てている。
 月系の奏唱を、演奏なしであそこまで使える人間は限られている。剣の英雄として頻繁に戦闘行為を行うバロックアートとしては、少女は喉から手が出るくらいに欲しい人材だろう。
「勧誘ご熱心なことで」
 痛め付けられた鬱憤を、ラウルは独り言で解消する。
 と、そのようなラウルの情けない独り言を、耳にした人物がいた。
 その人物は、不機嫌さを隠そうともせず、甲高い足音と共にラウルの眼前で立ち止まった。
「相変わらず、情けないです」
バロックアートの野郎がいたから、お前もいるとは思ってたよ。久し振りだな、ベールディア。相変わらず、バロックアートにお熱かよ?」
「気安く名を呼ばないでください、駄作」
 ラウルに対して暴言を吐くのは、ベールディア・ティファン
 人形のような精巧な美しさと人形のように冷たい雰囲気とを持つ少女だ。桃色の頭髪は鮮やかで、見る者の目をよく楽しませる。
 無表情で冷徹な色を見せる瞳の上には、赤縁のメガネがあり、それが彼女の冷たい印象を少しだけ和らげている。
 しかし、それらの特徴も、ほんの些細なモノでしかない。ベールディアを最も象徴しているのは、彼女の頭上に君臨している獣の耳であろう。己が頭髪と同色の耳は、それだけで彼女が普通の人間ではないことを物語っていた。
 そう、彼女は――妖人族。妖狐と人の混血なのであった。
 その証拠に、彼女の尻を隠すように生えている巨大な、もふもふの尾が、不機嫌そうに振り回されている。
 踊る尻尾に、ラウルは頬を緩めながら苦言を送る。
「そうコンコンするなよ。元パートナーに対して、ちょっと冷たくねえか?」
「……ルディーの人生における最大最悪の汚点です」
 彼女は露骨な嫌悪を露わにしつつ、
バロックアート様に大人しく殺されておけば良かったんです。お前のような英雄は、ルディーの物語に関わらないで欲しいです」
「関わってねえって。今日はバロックアートの方から因縁付けてきたんだぜ? 文句を言うなら、バロックアート様に言うんだな」
 ラウルにとって、今の台詞は何気ない軽口であった。バロックアートに対して良い印象を抱いていると言えば嘘になるし、殺されかけた恨みは現在進行形で募っている。
 それでも、あくまで軽口の体は保っていた。
 だが、ラウルの言葉は、目の前の少女を黙らせるのには十分過ぎる程の力を持っていた。

 

前回・次回

前回(4話)・次回(6話)

 

反省会

 今回は、サブヒロイン的立ち位置であるベールディアさんの登場回です。彼女はヘイト役でもありますので、ある程度読者さんに不快感を与えるのが役割なのですが、ちょっとやり過ぎたのかな、という気持ちもあります。

 特に、次話。

 彼女のようなタイプのヒロインについて、慎重な動かし方をする必要があると気が付きました。彼女が魅力的なヒロインに上れるくらいの加減で、ヘイトを高めてやることが大事ですね。