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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』第8話

龍と奏でる英雄譚
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前話(7話)・次話(9話)

目次

 前書き

 このお話は『第十一回小学館ライトノベル大賞』の一次通過、二次落ち作品です。毎回同じことを書いているので、そろそろ違うことを書きたい今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。束木です。

 では、本編へ。どうぞ。

 

 龍と奏でる英雄譚――第8話

 

  ▽

 ラウルの前方。手を伸ばせば届く位置に、少女が昂然たる態度で立っていた。
 夜の闇を存在一つで薙ぎ払おうとでも画策しているのだろうか。それくらい、彼女の佇まいは堂々としたものであった。
「酒場でナンパされてた……な、なんであんたが?」
「匂いを辿ってきたわ」
「犬かよ!」
「どちらかというと、妾は竜よ。強いのよ」
「神話かよ……」
 少女は何故か、そのそこそこの大きさを誇る胸を、大きく張っていた。どや顔である。
 ラウルは呆れを隠さず、少女へと質問を投げた。
「で、どうしてここに?」
「歩いていたら、魔神の断末魔のような、この世の終わりを感じさせる声が聞こえてきたの。だから妾はここに来たのよ」
「仮にそんな声が聞こえてたんなら逃げろよ」
「いいえ、妾は戦うわ」
「無駄な勇気に満ちてんな、あんた」
 ラウルの向けるジト目に動じた様子もなく、少女は実に堂々としたものだ。
 というよりも、少女の言う『魔神の断末魔のような、この世の終わりを感じさせる声』とはラウルの歌声のことであろう。彼は音痴を自覚していたが、まさかそこまでとは終ぞ思っていなかった。
 僅かな落胆が、胸に去来した。
 歌が下手というのは、生きていく上でかなりの重荷となる。奏唱がろくにできないと、最悪明かり一つ自分で用意できない。
 ラウルはどうにか日常を過ごせる程度の音感は持っているのだが、それも少女と比べればゴミ屑と同義の実力であった。ただ、ゴミも使い方次第で資源になる。と、ラウルは無理矢理気味に自身を鼓舞してから、
「変な歌で怖がらせて悪かったな。えっと……あんた」
「自己紹介がまだだったわね。妾の名前はドロシー。馴れ馴れしくドロシーと呼んでくれて結構よ」
「呼びにくいんだが……」
 馴れ馴れしく、などと言われてしまうと、呼びにくいことこの上なかった。
ラウルの苦言を受け、少女――ドロシーは大仰に一つ頷きを作ってみせると、
「呼びにくいのなら、ドローと呼ぶことを許可するわ」
「いや、そういうこっちゃねぇんだよ。発音の問題じゃなくてさ」
「何かしら、貴方。その『うわ、何だこいつ。お話が通じないアホの娘か?』という目」
「そんな具体的な目はしてねえよ」
「確かに、貴方の目はただのチンピラの目ね」
 ラウルは大きく吐息した。まったく話が通じない上に進まない。別段、ラウルは気の短い方ではないが、かといって気が長い訳でもない。
 このまま不毛な時間を過ごすくらいならば、さっさとこの場から逃げた方が良い。
 けれども、ラウルは非情になりきれなかった。もう少し話して、それでも駄目ならば何か理由を付けて帰ろう、とそのような甘い考えの元、
「オレはラウル・シーンス。で、ドロシー。オレなんかに何の用だ? 言っておくが、期待はすんなよ。オレは何にもできねえから」
「そうね、そろそろ本題に入りましょう。ねぇ、ラウルくん。さっき貴方が歌っていた歌を、妾に売っては貰えないかしら?」
「歌? あんな子守歌なんか買って何すんだよ?」
 ラウルの質問を耳にしたドロシーは、ふふんと鼻を鳴らすと、そのそこそこの胸を張り、大いにラウルを赤面させ、
「歌うのよ」
 当たり前のことを言い切った。
 ラウルは怪訝な顔を隠すことさえできなかった。しかし、どうやらドロシーの言い分はまだ終わっていないようだ。再び、彼女は口を開いた。
「妾の趣味は歌を集めることなのよ。そして、貴方が歌っていたのは――呪歌よね? レアだわ。欲しいの。とても欲しいの、エロいこと以外なら何でもするから、貴方のを妾にください」
「ちょ、ちょっと! 必死過ぎるだろ。離れろ!」 
 ドロシーは己の欲望を吐露すると、ぐいぐいとその端正な作りの顔面をラウルに寄せた。鼻と鼻とが鍔迫り合う。
 彼女の表情は、とても正視に耐えなかった。
 欲望のまま唇からは涎を垂らし、目はうっとりとろんと蕩けきっている。頬はほんのりと朱色に染まり、眦は微かに涙で濡れている。
 中毒症状のようであった。
 ドロシーの異様な状態を、通行人がギョッとした目で見ている。その後、少女が縋りついている対象がラウルだと気付くと、人々は一様に軽蔑の眼差しを向けてきた。信用皆無である。
 慌ててラウルは懇願した。
「わ、わかったよ。売る。売るからさ、せめて離れてくれ」
「ありがとう。嬉しいわ」
「てか、あんたどんだけ歌好きなんだよ……」
「歌は素晴らしいわ。健やかなときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、歌を愛しているわ」
「結婚でもすんのかよ」
 まあ、しかし一つわかったことがある。
 ドロシーは頭がおかしいのだろう。そう考えると、今までの言動にも説明が付く。付いてしまうのであった。ラウルは脳内を対頭のおかしいドロシー用のモノに作り替えた。

 

前話・次話

前話(7話)・次話(9話)

 

反省会

 ヒロインであるところのドロシーの性格付けですが、残念な部分を強調しようかと意図しました。正解かどうかは定かではありませんが、人には好き好きありますからね。ここはまあ、こういう感じで構わないような気もします。ですが、ラウルが引きすぎの気もしますね。

 やはり、読者さんは語り手の主観に大きく寄ると思われますので、この辺りは注意した方が良いでしょう。かわいいを連呼させれば、本当にかわいいように見えてくるものですから。もちろん、これは小手先も小手先なのでしょうけれど。ヒロインを如何にかわいく見せるのか……これはライトノベルの命題なのかもしれません。研究をしていく価値はありますよね。

 

 では、さようなら。

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