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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』10話

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前回(9話)・次回(11話)

目次

 

前書き

 いよいよ、他の賞へと送りつけるお話の第一稿が完成しました。あとは、これを一ヶ月ほどことこと寝かせて、推敲を重ねるのみです。みなさんは、どれくらい推敲しますか?

 あまり推敲を重ねすぎても、作品の勢いが失せるような気もします。かといって、妥協の末の推敲に価値はあるのか。是非とも、誰かの意見を聴きたいところ。

 ということで、このお話は『第十一回小学館ライトノベル大賞』の一次通過、二次落ちです。毎回落ちと書いているので、感情が抉られ、意気も消沈してしまいそう。

 では、本編です。

  

龍と奏でる英雄譚――第10話

 

 今、ラウルの手の中には、彼には一生涯縁のないだろうと思われる程の大金が存在している。
 故に、ラウルはその場で商売人の笑みを作り、
「へへー、まさか貴女様がこんなに大金持ちだったなんて、オレァ全然知りませんで。これは今まで申し訳ありませんでした!」
 やや引き攣る笑顔を湛え、何度も揉み手を披露した。率直に言って、最低であった。
 その感想はドロシーも抱いたようで、
「ラウルくん……」
 彼女は軽蔑の眼差し――ではなく、哀れみ憐憫同情の眼差しをラウルに向けていた。流石のラウルも、その視線には耐えかねた。
「うるせえなあ! 生きる為の処世術だよ、この野郎!」
「一応注意しておくわね。妾は野郎じゃないわ」
「知ってるよ!」
 叫びを返しつつ、ラウルは大金(ゆめ)の詰まった袋も返却した。名残惜しさを微塵も隠し切れていないことが、更なる同情を買うこととなる。
 しかし、ラウルはその視線を打ち破った。
 ドロシーは思わず返ってきた重みに首を傾げる。
「どうして返すのかしら? 足りないの?」
「違う。多過ぎるんだよ」
「何がいけないの? 頭おかしいの? 月魔法を奏唱しましょうか?」
「あんたこそ、その金銭感覚治した方が良いぜ」
 というよりも、小心者のラウルとしては、ここで下手な大金を手に入れ、後々面倒なことになることが怖かった。その恐怖心がなければ、欲に目が眩んで受け取っていたかもしれない。
(酒場の修繕費もあることだしな)
 ラウルはチラチラと袋を見ながら、それでも律儀に説明した。
「オレの歌がどんだけ貴重なもんだとしても、その価値をこっちは知らねえ。オレが価値がないと思ってるモノを、大金で買わせるのはあんまり良いことじゃない」
「潔いことを言っている割に、ずっとお金を見ているのは何故?」
「貧乏人の性だよ! どんだけ大金見ようと、見るだけならただだろ。それとも、金取るのか? 金持ちはそうやって稼いでるのか? 金があるところに金が集まるってそういう……」
 ラウルが謎の納得、社会勉強をしそうになっていると、ドロシーが大きく頷いた。
「確かに、貴方の歌にそこまでの価値はないわね」
「その言い方はそれはそれで傷付くな……」
 事実なので文句は言えないのだが。
「それならば、こうしましょうか?」
 と、ドロシーはどや顔で手を打った。
 我に名案ござい、といった様子のドロシーに嫌な予感を覚えつつも、ラウルは彼女の言葉を待った。
「貴方を雇うわ、ラウルくん」
「オレを雇う? 何で?」
「簡単よ。ラウルくんの歌がプライスレスだと判明した今、妾がお金を払う為には、貴方の労働が必要になるのよ」
「別に、金額を減らせば良いだけだろうがよ。酒場で一杯奢ってくれるとかで十分だ」
「そうはいかないわ。一度出したお金を懐に戻すだなんて、女が廃るもの」
「……漢だ!」
「女よ」
 とにかく、ラウルはドロシーの考えに理解を示した。というよりも、素直に尊敬の念を抱いた。ラウルを労働させる人間は、時折金を払わないことすらある。それに鑑みると、彼女の志は立派なモノであった。損をする考えではあるのだが。
「だが、どうしてオレを雇おうと?」
「酒場で聴いたのよ。貴方、何でも屋なのでしょう? 何でもしてくれるのでしょう?」
 ドロシーは半歩ラウルに寄ると、しゃがみ込み、上目遣いで、
「お願い」
 見目麗しい少女の渾身のおねだりに、ラウルの心は屈服させられそうになる。けれども、彼の理性は中々どうして侮れない。
 話が旨過ぎる。
 初対面の相手が、ここまで良くしてくれるのは不自然だ。新手の詐欺かもしれない。
 ラウルは息を飲み、緊張の面持ちで問う。
「オレにできることなのか?」
「ええ、少々荒事に挑むつもりなの。だから護衛を雇いたかったのよ」
「荒事!? 護衛? どうしてオレに頼むんだよ?」
「貴方がここにいたからよ」
 哲学的な回答ではあったものの、ラウルの聞きたい言葉ではなかった。
「オレに強さを期待されても困るぞ」
「でも、貴方は英雄なのよね?」
 ドロシーの指摘に、ラウルは己の左手を見やった。正確には、左の薬指の付け根を見た。そこにあるのは、黒い輪状の痣である。
 英雄の証だ。
「英雄って言ってもな」
 と、ラウルは自虐的に笑んだ。
「オレは六人の中でも、失敗作だぜ? 戦ったところで一般人とそんなに変わんねえよ。オレが頑張って手に入れた力は、所詮努力の範囲で実現できるもんだ」
「どうでも良いことよ」
「……ばっさり切るな。これでも一応、六人しかいない英雄だぜ?」
「六分の一がどうしたというの。妾は全世界分の一匹よ」
「匹ってなんだよ。一匹狼、極め過ぎだろ」
 だが、ラウルはドロシーの言葉に感心していた。いつも、六人の中で最弱、という考えを持っていた。ドロシーの考え方は壮大ではあるものの、ラウル好みであった。
 少しだけ、ラウルは思ってしまった。
 悪くない、かもしれない、と。
 騙されることも、偽られることも、裏切られることも、ラウル・シーンスは慣れている。それは騙されても良い、ということではないのだが。
 それでもラウルは思う。どうせ騙されるのならば、気に入った人間に騙されたい、と。

 

前回・次回

前回(9話)・次回(11話)

 

反省会

 これはお話自体の反省ではないのですが、やはり切り方が解りません。こまめに切らず、必要に応じて長めにしてもよろしいのでしょうか。お話には流れがありますから、不自然なところで切ると却って読みづらいこともあるかと思われます。

 念の為に、複数更新の形で取り繕ってはおりますが、それにも限度はございます。

 今はまだ文庫本で30ページくらいなので、クライマックスのような肝要さはなく、多少のぶつ切りは問題なくとも、見せ場でぶつ切りは駄目ですよね。

 ちょっと、この辺りを考える必要がありそうです。

 

 で、本編についての反省ですが、文中の「、」が多すぎますね。これは最早癖なのですが、どうにも多用してしまいがちです。これこそ、文章がぶつ切りにされているような印象ですよね。

 ある程度は推敲で改善されるかと予測できますが、根本的に解決するためには大規模な改革が必要かと。ただ、これの改善方法は毎回言っているように、写経をはじめとした基礎練習に終始します。ですから、早く写経を始めねばなりません。

 幸い、日本ファンタジーノベル大賞用に書いていたお話が、今日完成しました。急に文体が変化して、物語に違和感が生じることもなかろうと思います。そう、今日からわたくしは写経に励みますとも。

 

 ただし、自身の作風とあわないお話を写経しても、悪影響しかございません。どの作品を写経の題材に選ぶのかは、慎重に決定せねばなりませんね。また、一人ではなく、最低でも三人くらいの文章は写しておきたいものです。そこに現在の自分を交え、良い感じに良いところ取りの文章へと昇華できたらな、と妄想します。

 

おわりのコーナー

 今日の語彙は『閑散』

    1. ひっそりと静まりかえっていること。また、そのさま。「平日の閑散とした遊園地」
    1. 仕事がなくて暇なこと。また、そのさま。
    1. 売買・取引などが少ないこと。また、そのさま。「不景気で閑散な市況」

     

 引用は『goo国語辞書』より。

 では、さようなら。

 

前回・次回

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