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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』15話

龍と奏でる英雄譚
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前回(14話)・次回(16話)

 

目次

 

前回のあらすじ

 風呂場に乱入してきたドロシー。どのようなラッキーなシチュエーションか! ということもなく、今回は比較的シリアスな内容です。あまり嬉しい展開ではないのですが、クライマックスに関係する大切なシーンだったりもします。

 で、このお話は『第十一回小学館ライトノベル大賞』の一次通過、二次落選作品です。ここを毎回読んでくださっている素晴らしい方は「もう良い。解ったから!」と思われるでしょうけれど、わたくしは何度でも言います。

 このお話は『第十一回小学館ライトノベル大賞』の一次通過、二次落選作品です。

 このブログの最初の記事でも書きましたが、一番作者として問題があるのは二次落ちだと思うのです。ですから、この紹介は毎回、思ったよりもわたくしの心を抉りますね……

 

 本編です。

 

龍と奏でる英雄譚――15話

 

   ▽


 ドロシーはチラチラとラウルの下腹部を観察しつつ、唐突な乱入の訳を話し出した。
「ラウルくんはあまり奏唱が得意ではないようだから、きちんと洗えないのではないかと思ったのよ」
「簡単な生活魔法くらいならぎりぎり使えるわ!」
「えっ。頭を洗うのは中々難しい筈よ? 失敗したら頭が吹き飛ぶかもしれないわ」
「それはあんたの奏唱がもたらした過剰威力だよ。てか、普通の人間は頭洗うときは手を使うんだ」
「泡はどうやって用意しているの。普通に水洗いしても、汚れは完全には落ちないわ」
「鱗使えばいいだろうが! これだから一流の奏唱師は嫌なんだ。泡出す為に雫属性唱えるか、バカ! 早く出てけよ! ばーかばーか」
 思わぬタイミングで裸体を見られたラウルは、かなりの羞恥を感じていた。その上、短剣まで構えて、全力で戦闘態勢に入っていたのも気まずさを誘う。しかも全裸で、だ。
 ラウルの出て行けという叫びは、懇願に近いモノがあった。
 それは別に、彼がただ恥ずかしかったから、ではない。無論、ドロシーが本当にラウルを洗う為だけに来たが故、普通に服を着ていて消沈したからでもない。
 見られたくなかったのだ。
「ラウルくん……貴方、それどうしたの?」
 ドロシーの視線の先。そこにはラウルの肉体があった。そして、その肉体の上には――夥しい数の傷跡、生々しい、全身に見るに堪えない裂傷痕が見受けられた。
 ドロシーは珍しく顔を真っ青に変え、ラウルの元に駆け寄ろうとした。それを、ラウルは手のひらを向けるだけで制した。
 彼は自らの肉体をつまらなさそうに睥睨すると、
「大したことねぇから。ガキの頃の傷が残ってるだけだ」
「大したことがない? 妾にはそうは見えないわ」
「今怪我している訳じゃない。治った後だよ」
「傷跡が酷いわ。時間が経ち過ぎているから、全部は治せないけれど……」
 不安そうな表情と共に、ドロシーは奏唱を開始した。唇を大きく開き、全霊での奏唱を行う。たった一人の歌声だというのに、その声量も相まって、まるでオーケストラの演奏のようだ。
 だが、ラウルはその奇跡を受け取らなかった。
 首を横に振るい、治療を拒んだ。
「オレのことは放っておいてくれ。この傷跡は、治さなくていい奴だ」
 ラウルの切な願いを聞き届け、ドロシーは奏唱を中断した。
 けれども、彼女は風呂場から出る気はないようだった。ラウルの傷を遠慮がちに見つめ、
「貴方……その傷は誰に付けられたの?」
「言う必要性を感じない」
「そうね。……では、質問の内容を変えるわ」
 ドロシーは、その爛々と光を放つ悍ましい赤の瞳で、容赦なく、ラウルを射貫く。
 風呂に気持ちの悪い静寂が訪れる。時折、水滴が床に落ちる音だけが、いやに響く。
 ドロシーがゆっくりと問うてきた。
 確信に触れる、問いを。
「貴方の歌っていた歌。あれは――誰が歌っていたの?」
「――ッ! あんたには関係ねえだろうが!」
「貴方の傷跡は普通じゃ付かない。ラウルくんのそれは」
 ややドロシーに逡巡が見えた。
 その様子はラウルに諦念をもたらした。彼女が傷の正体に気付いたのならば、真実を語るのに躊躇うのも当然だ。
 ドロシーの口を汚す訳にはいかないと、ラウルは彼女の言葉を投げやりに引き継いだ。
「虐待痕だよ」
「そうなのね。では、あの歌はお父様かお母様が?」
 ドロシーの声には、何かを伝えようとする、そのような真摯さが垣間見えた。だから、ラウルも彼女を黙らせることができなかった。
 聴きたくはない。
 だというのに、ラウルの耳は必死にドロシーの声をかき集めようと藻掻く。彼女の声に、言葉に、救いを求めるかのように。何か、知らなくてはいけないことを知れる気がした。
 呼気に乱れが生じる。
 吸っても吸っても、空気が足りない。それでも、ラウルは息を吐き出し、ドロシーの質問に応答した。ただそれだけのことなのに、寿命が減ったような錯覚を感じながら。
「お母さんだ。あの歌はお母さんが作った」

 

前回・次回

前回(14話)・次回(16話)

 

反省会

 ややハードな内容を取り扱ってしまったな、という気持ちがあります。そして、それに対してドロシーが言及し、問いただそうとするのですが、人によっては彼女の言動にムカつくかもしれません。

「このお節介め!」と。

 一応、次話でその辺りを補うための会話を入れていたりはしますが、ドロシーへの好感度が気になるところ。ヒロイン、というかキャラクターの好感度もよくよく意識して書かねばならないな、と思う次第。

 主人公やヒロインは好感度を稼ぐように(序盤、敢えてヘイトを溜めて、クライマックスで良い方向へと導くのも好きです。が、それにはキャラクター以外の部分で読者を惹き付ける必要があり、現状のわたくしの実力では辛いものがありました)、悪役のヘイトは読むのを止めない程度に強めに、と。

 まあ、ただし、読者さんのことを気にするあまり、自分のお話を書けないのではお話になりません。ということで、この辺りもさじ加減なのですよね。

 ほんと、小説ってさじ加減が大事ですね。お菓子作りを思い出します。

 

 ということで、今回はこれまで。一応、今日はもう一話更新予定ですが。

 では、さようなら。 

 

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