読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』17話

スポンサーリンク

前話(16話)・次話(18話)

 

目次

 

前回のあらすじ

 母親の作った歌は呪歌だった。そして、母の変貌はその歌の影響によるものであった……と知らされたラウル。だが、彼はその事実を受け入れることができなかった。

 というやりとりの後のベッドです。

 ちなみに、このお話はとあるライトノベル大賞の一次通過、二次落ち作品です。よろしくお願いします!!

 

 龍と奏でる英雄譚――17話

 

   ▽

 

 風呂場から出たラウルは、努めて平静を繕った。
 内容の虚実はともかくとして、ドロシーは善意で母のことについて触れてくれた。そして、実際に救われた、と思える部分もあった。 
 そのような彼女に怒りをぶつけることは、ラウルの本意ではない。
 彼は悲しいことに、母の教えを忠実に守っていた。
『自分がされて嬉しいことだけを、他の人にはしなさい』という言葉。彼はそれを生きる上での前提としていた。
 ラウルは髪をドロシーの魔法で乾かされつつ、彼女への感謝を述べた。
「ま、まあ、助かったよ。あんたにはきついことをさせたな」
「少しは前向きになれたかしら、ラウルくん」
「悪くない考え、だとは思う。けど、オレには受け止められない答えだった」
 せめてもの誠意として、ラウルは己が気持ちを素直に暴露する。
 ドロシーは満足そうに頷くと、
「構わないわ。妾なりの優しさは込めたし、それが貴方に伝わった、とそう考えさせて貰うわ」
「ああ、その認識で問題ない。その……ありがとうな」
「けれど、良いの?」
「何がだよ?」
「今日あったばかりの他人に、触れられたくない場所を触れられて、怒らないのかしら? 妾、瀕死になるくらいまで殴られる覚悟はあるのよ?」
「そんな性格悪くねえよ!」
「あら、そう。こういう場合、普通は殴るモノだと思うわよ? 生意気な女をぶん殴って、爽快な気分を得るのが大多数の意見よ」
「そんな奴いねえよ。居たとしても、そいつは人じゃない」
 ドロシーの暴論に呆れていると、丁度ラウルの髪が乾ききった。彼の、頭から墨汁を被ったかのような漆黒の髪が、更にその黒さを増した。
 髪が乾くと強烈な眠気が頭を殴りつけてきた。身体が綺麗になったことにより、爽快な心持ちになった。まるで、身体の汚れごと、心の穢れも洗い流されたかのようである。
「悪い。オレはそろそろ寝るよ」
 眠気には勝てず、ラウルはドロシーにありのままの眠気を伝える。そのまま、ラウルはソファに向かおうとして、ドロシーに袖を掴まれ、強制的に歩みを止められた。
「何処に行くの?」
「何処にも行かねえけど」
「寝るのならベッドの上じゃないの? 床で寝るつもりかしら」
「ベッドはあんたが使うだろ。この部屋はあんたが借りてるんだからよ。それに、オレは路上生活とかで床寝には慣れてる。ソファが使えるだけで贅沢だ」
「広いのだから貴方も一緒に寝れば良いじゃない」
 ドロシーは至って真剣なようであった。それはラウルをからかう為の戯れ言ではなく、本気で彼が一緒に寝ようとしないことが理解できていないだけなのだろう。
 ドロシーは半ばソファを睨み付けながら、
「あれ、燃やそうかしら……?」
「どういう発想なんだよ!」
「でも、妾の母様は言っていたわ。主従は常に同じベッドで寝るモノなのだ、と」
 いつ主従になったんだよ、さっきは友達だっただろうが、とラウルは静かに指摘を打った。
 ラウルは露骨に嫌がって見せているが、反対にドロシーの方も一緒に寝ようと頑なである。余程、母親の言葉が大事なのだろう。
 ラウルにもその気持ちは解る。
 解る以上は彼女の提案を無碍に扱う訳にもいかない。
 数瞬の思案の後、
「わかったよ。あんたとしちゃあ、雇った人間が体調を崩すのは厄介だもんな」
 こくり、こくり、とドロシーは何度も小さく頷いた。
 その様子にラウルはついつい破顔してしまう。普段、妙に冷静な彼女が、子どものような反応を見せたのが面白かったのだ。
 恥ずかしいという気持ちを破棄して、ラウルは大人しくベッドへと向かった。
 手を出さなければ良いだけの話だ。
 ベッドに潜り込むと、一気に快楽が足下から迫り上がってきた。今まで保有していた緊張感が一気に解されて、肉体が確かな寛ぎの気配に歓喜しているのが知覚できる。
 やはり高級な宿だけあって、ベッドの寝心地は、軽くラウルの疲労を粉砕した。
「ここが天国か……」
 感嘆。
 思わず零れる、幸せな溜息。
 そのようなラウルの様子を観察し、ドロシーはうっとりと微笑んだ。
「じゃあ、灯りを消すわよ」
 言うと、ドロシーは清らかな、澄み渡った音を、指を鳴らして発した。
 音に応じて部屋が暗黒に包まれる。
 やって来た暗闇に安堵し、ラウルは疲れに身を委ねようとした。肉体を優しく受け止め、しかししっかりと支えてくれているベッドに全てを預け、ただ睡眠の快楽を貪ろうとした。
 だというのに、ラウルの神経は研ぎ澄まされる一方であった。
 目が冴え、いやに五感が鋭敏を極める。
 ――眠れない。
 自身の真横、肩が触れ合う距離にドロシーが寝ている。彼女はラウルのことを信用しているのか、既に甘い寝息を立てていた。
 妙に、肩に触れる体温がじんわりと己が肉体に広がっていくのを、ラウルは確かに感じる。
 気まぐれに息を殺してみると、身動ぎ一つしていないのに、掛け布団がほんのりと上下する。普段ならば聞き逃したであろうドロシーの寝息が、生々しい色気を孕んでいるのに、ラウルは気が付いてしまった。

 

前回・次回

前話(16話)・次話(18話)

 

反省会

 今回は、結構悪くないのではないのかな、なんて自惚れております。ただ、少し気になるところを挙げるのでしたら、ドロシーの言動でしょうか。やや、反感を買う懸念があります。ただし、これは彼女の性格なので、もしも反感を買ってしまって読者さんが離れてしまう場合は、わたくしのキャラクター設定にミスがあったということになります。

 わたくしはドロシーを書きたかったので、これはもう仕方がありません。すべての方に愛して貰うのは難しいことですからね。もちろん、その言葉に甘えて多くの人から愛されることを目指さないのとは話が違いますよ。

 

 そういえば、ドロシーがラウルに対して真摯で親切なのには、一応の理由があり、今回もその理由の一端をバレないように描写しています。現時点では推理のしようも内要素なのですがね。強いて言うのならば、タイトルにヒントがある、という感じでしょうか。ともかく、このドロシーがラウルに優しい理由が、ちょっと反則気味かな、という気はしています。

 その辺が判明したときに、もう一度触れるつもりではありますが、念の為に今も軽く言及しておきます。

 

 では、さようなら。

 

 

スポンサーリンク

 

前回・次回

前話(16話)・次話(18話)