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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』19話

龍と奏でる英雄譚
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前回(18話)・次回(20話)

 

目次

 

前回のあらすじ

 ドロシーと共に夜を過ごしたラウルは、しかし、快適な目覚めを得ることができなかった。何故ならば、彼には二日酔いという最悪の敵が待ち受けていたからだ。果たして、ラウル・シーンスは最低最悪の敵を打ち破ることができるのか!?

 ちなみに、このお話は『第十一回小学館ライトノベル大賞』の二次落選作品です。よろしくお願いします。

 

 では、本編です。

 

 

龍と奏でる英雄譚――19話

「魔法に頼るのが嫌と言っているけれど、その水も魔法の産物よ?」
 ドロシーの指摘に、ラウルは反論の言葉も出ない。
 ドロシーはやれやれと肩を竦め、
「聞こえるでしょう? オーケストラの歌声が……」と窓へと目を向けた。
 彼女の視線を追いかけ、ラウルは窓の外を見つめる。そこから確認できるのは、巨大な石造りの神殿であった。白で統一された、見るだけで心が清められそうな建築物である。
 あそこでは、たった今、オーケストラが歌っているのだろう。
「生活に必要な魔法を、ああしてオーケストラたちが用意しているのよね」
 ラウルたちが指を鳴らすだけで簡単な生活魔法が使えるのは、オーケストラたちが予め魔法を準備していてくれるからだ。
 王国民は税金として、オーケストラたちに金を払うことによって、気軽に魔法の恩恵に預かれる。この王都に住む者でオーケストラたちに頭が下がらない人間はいない。
 彼らが一日中歌ってくれているお陰で、人々は火を起こし、水を浴び、灯りの下を歩けるのだから。
「ご苦労なことだよ、本当に。一日中歌うって、相当苦しいだろうに」
「流石に交代制よ。それに、常時疲労回復の魔法も受けているでしょうしね」
 それでも大変なことに変わりはない。彼らに何かあったときには、この王都の機能が全て失われるのだ。緊張感は相当のモノだろう。
 オーケストラたちに内心感謝しつつ、ラウルが顔を洗っていると、背後でドロシーの奏唱が始まっていた。歌の終わりと同時に、ラウルの酔いは消え失せた。
「すげえな、あんた。酔いがここまで消えちまうなんて」
「ええ、すごいわ、妾は」
 ラウルの素直な賛辞を、ドロシーは素直に胸を張って受け止めた。彼らは顔を見合わせ微笑み合うと、その調子で支度を済ませた。
 宿を引き払い、長い庭を歩きながら今日の予定を話し合う。
「んで、今日はどうするつもりなんだ? 見世物小屋に禁歌があるって言ってたよな?」
「その通りよ。下見は事前に済ませてあるわ。今日、乗り込みましょう」
「今日? 随分と焦ってんな。もっと準備してからでも良いんじゃないか?」
「ダメよ。ラウルくん、禁歌を狙っているのは妾たちだけじゃないの」
「それはそうだけどよ。でも、相手は禁歌使いなんだろ? 禁歌がどんな力を持ってるか知らないが、あんたの言葉じゃあ戦争の切っ掛けになる歌だ。それを持ってる奴と、最悪争うんだぞ? オレたち以外の奴だって、そうそう手は出せねえって」
 ラウルの主張は実に正鵠を射た意見だと言えよう。
 禁歌使いは強力に違いなく、それと対峙するのは命懸けとなる。ラウルはヘラヘラとしているが、それでも今回の依頼内容を重く受け止めていた。最悪、手に負えないと判断したら、バロックアートなどを筆頭に、他の英雄に頭を下げるつもりもある。
 ことはそれだけ重大なことなのだ。失敗は許されない。
 ドロシーは視線を遠くへ向けた後、感情の籠もらない声で反論してきた。
「敵を甘く見ないで、ラウルくん。最悪、禁歌使いたちと交戦になっても、妾には切り札が三枚あるから勝算はあるのよ」
「禁歌を甘く見てんのは、あんたの方じゃないか?」
「禁歌は奏唱をしないと発動しないでしょう? どんなに危険な魔法も、歌い終わるまでに相手を倒せば終わりよ」
 奏唱師は強力な戦力で、殆ど万能の戦力と表現しても良い。それぞれ、得意な魔法や苦手な魔法はあるのだろうが。
 しかし、それでも戦闘時に奏唱師が一人というのは中々あり得ない。歌っている間、奏唱師は無防備となるからだ。歌いながら戦闘を行える者もいるにはいるが、それでは歌の完成度が落ちる。それ即ち、魔法の威力の低下を意味する。
「まあ、あんたの言いたいことはわかったよ。あんたは禁歌よりも、禁歌を狙ってくる奴の方が危険、と。そう言いたいんだな?」
「その通りよ。もちろん、禁歌使いも油断できない相手で、条件次第では妾たちは無条件に蹂躙されると思うわ。そもそも、妾は全ての禁歌の効果を知っている訳じゃないものね」
 ラウルは頭を抱え、恐怖心と混乱をどうにか押さえる。
「禁歌だけでも死ぬ未来しか見えないのに、もっとヤバいのまでいるのかよ……この世の終わりだな、帰って酒を飲まないか?」
「貴方のダメ人間度はよくわかったわ。でも、行くの」
「ちなみに、その禁歌よりも危険な奴らって何なんだ? あんたは知ってる風だけど」
 ドロシーは拳の中に爪を食い込ませながら、ラウルの質問に答えを作った。
「……罪歌七音。最悪の死刑囚たちよ」

 

   ▽

 

前回・次回

 前回(18話)・次回(20話)

 

反省会

 これは現時点の反省ではないのですが、後半に登場する設定と今回登場する設定とに、ちょっとした矛盾が見受けられます。矛盾というほどではないのかもしれませんが、ともかく、言葉に不足があったように思われます。

 一応、その設定が登場したときに触れますが、ベールディアの奥の手に関係します。

 

 こういう矛盾をなくすためにも推敲は重要ですね。

 では、さようなら。

 

 

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前回・次回

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