読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』22話

龍と奏でる英雄譚
スポンサーリンク

前回(21話)・次回(23話)

 

目次

 

前回のあらすじ

 バロックアートとのいざこざを乗り越え、ラウルたちはいよいよ見世物小屋への侵入を果たす。そこで待ち受けていたのは、見たことも聴いたこともないような不思議な生き物ばかり……この見世物小屋の正体とは!?

 

 ということで、本編です。

 

 龍と奏でる英雄譚――22話

 

「で、ドロシー。禁歌の位置はわかっているのか?」
「下見したときの感じでは、この奥が怪しいわね」
 ラウルたちは見世物小屋内を一直線に進んでいた。この見世物小屋は鉄骨で支えを作り、その上に布を被せることによって建物としての形状を保っている。ラウルはその建物を建物たらしめている布をナイフで切り裂いて進んでいるのだ。
 新しい壁にぶつかる度、ラウルは聞き耳を立てる。足音、話声を探って反応が無ければ壁を引き裂いて前へと進む。時折人がいるときは、道を迂回するだけだ。
 見世物小屋を構成する建物は、全部で十六。突破したのは五つ。一直線に進んでいるので、もう少しで最奥に到着するだろう。
 手慣れたラウルの犯行に、ドロシーは苦笑していた。
「慣れているわね、ラウルくん」
「隠密行動中に喋るなよ……まあ、色々出来ないと何でも屋はできないからな。とはいえ、犯罪に手を貸すのはこれが初めてだぞ?」
 仕事は順調であった。しかし、ラウルの胸には不安が押し寄せてきている。彼が懸念しているのは、この異様なまでに薄い警備網であった。
(禁歌の譜面があるんだとしたら、この警備の薄さはおかしいだろう)
 最悪、ここまで来るのに戦闘が起きることもラウルは覚悟していた。だが、今のところ何の危なげもない。
 考えたところで前進あるのみなのだが、それでもラウルは考えずにはいられなかった。
 ラウルは布の壁へと耳を密着させ、息を殺して音を聞く。
 人の気配はない。あるのは――動物の荒い鼻息だけである。今までも何度も耳にした、動物の荒々しい生命活動音。それに足音。ただし、今回の音は少し異なるように思われる。
 隣にいるドロシーに、相談することにした。
「なぁ、ドロシー。足音の種類が今までと違う。今では檻の中にいたから足音が硬かった。けど、今回の奴は……」
「檻の中にいない、と? そう言いたいのかしら?」
 ラウルは音を立てないように、静かに頷いた。
 おそらく、今まで警備が薄かったのは、わざわざ人を雇って警備する必要がなかったからだ。人よりも素晴らしい警備がいたからこそ、この見世物小屋の警備は貧弱だったのだろう。
 ラウルはドロシーの顔色を確認した。
 変わらない、涼やかな表情が保たれている。彼女の自信を目の当たりにしてしまうと、一々怖がってしまう自身が情けなく思えてくる。
「戦闘になると思う。オレが仕留めてくるから、あんたはここで待っててくれ」
「笑止よ、ラウルくん。妾を舐めないで頂戴。言っておくけれど、妾は回復魔法は苦手なのよ」
 ドロシーの回復魔法は一流を名乗っても、誰の笑いも買わないレベルのモノだ。そして、それが苦手な魔法での実力なのだとしたら、彼女の本気は想像もできない。
「わかったよ。でも、オレが先に突っ込むのは確定だ。良いか? ――行くぞ」
 ラウルは腰に用意していた短剣を抜き、二刀流の構えを見せると、片方の刃で布を切り裂く。
 同時、地を蹴り付けた。
 そして、
「はあ!?」
 ラウルは巨大な毛玉に――押し倒された。

 

   ▽

 

 ラウルの顔面を、生暖かい感触が撫でていく。それは動物の舌の感触であった。
 ベトベトの気持ち悪い唾液が、ラウルの顔を隈無くコーティングしていた。ラウルは地面に押し倒され、顔面を舐められながらも、どうにか敵の姿を確認する。
 そこにいたのは、所謂地竜と呼ばれる動物だった。
 体長は凡そ三メートル。四足歩行の動物で、空を飛ぶことは出来ないが翼が生えている。全身は硬い鱗にぎっしりと守られており、頭上の二本の角が威風堂々と天を貫こうとしている。それこそが地竜の姿の筈だ。だが、目の前の地竜は少々様子が異なる。
「きゅる。きゅるるるるるるる」と地竜は鳴いた。
 この地竜には鱗がない。その代わりに、全身が綿のような毛に覆われている。ふわふわだ。それに妙に甘い香りがする。
 ラウルの口に、綿が少し入り込む。思わず飲み込んでしまったラウルは、しかし、その味に身体を震わせた。――甘くておいしい。
 意外と甘党であるラウルにとって、地竜の毛の味は天国への誘いであった。
 ラウルはもこもこの地竜らしき生物の登場に、大いなる困惑を隠し切れないでいた。すると、為されるがままのラウルを笑い、ドロシーが遅れてやって来た。
「懐かれているわね、ラウルくん。いえ、懐かれているというよりも、発情されているのかしら? ……罪な男ね」
「見てないで助けろよ! 何だ、このふわふわは」
「おそらく、この生物は禁歌によって作られたのでしょうね」
「はあ? 生物を作る、だと? そんなこと……」
 できる訳がない、と言い掛けて、ラウルは己の愚を悟る。今まで見世物小屋で見てきた謎の生き物たち、そして目の前のふわふわ。どれも見たことはおろか聞いたこともない生物ばかりであった。
 禁歌。禁じられた歌。世界を作り替え、制することができるという魔歌。
 今までの不思議が仮に、禁歌であったのだとしたら、全てに説明が付いてしまう。
 ドロシーは謎のふわふわを冷たい目で観察し、意見を作った。
「生物の創造。それが第四禁歌『傲慢』の章の力よ」
 生物の創造。それはおそらく人間が本来踏み込んではならない領域の話であろう。その領域を土足で踏みにじったという事実は、歌が禁じられた理由には十分であった。
 想像以上の禁歌のデタラメ具合に、ラウルは頭の中が真っ白になった。それでも、絶えずふわふわに舐められることによって、強引に意識は現実世界に戻される。
 ラウルは顔を服で拭いながら、
「で、どうするんだ? こいつはオレが食い止めるが……」
「もっと違う場面で今の台詞を聴いていたら、多分惚れていたと思うわ」
「うるさいな! オレだってもっと良い場面で言いたかったよ!」
「一応言っておくけれど、貴方の方がうるさかったわ」
 ラウルに襲い掛かる地竜(めっちゃ舐めてくる)が守護していたらしい場所には、鉄製の扉が待ち受けていた。その建物だけは、布ではなく鉄で作られていた。魔法を使って建築したのであろうことは、誰の目から見ても明らかである。
「鍵が掛かっているわね」
 ドロシーは何度も扉を開こうとしているが、その甲斐はなく、扉はうんともすんとも言わない。鉄の硬質な音が響くだけである。
「ラウルくん、貴方のコソ泥スキルで解錠できないかしら」
「人をコソ泥扱いするな……できるけど」
 言うと、ラウルは全力でふわふわの魔の手(舌)から逃れ立ち上がる。彼が立ち上がるのを見て、ふわふわは寂しそうにしゅんと項垂れた。
 ラウルは表情を苦いモノに変えると、やれやれとふわふわの鼻頭を撫でてやった。
「後でな」
「きゅ、きゅゅゅゅゅゅゅるるるるるる!」
 それだけで、ふわふわは狂喜乱舞。その場で回転を始めた。
 その光景を見たドロシーは、どん引きの極みである。気持ち悪いモノを観た、というように自身の身体をしきりに擦っている。
「ラウルくんの身体から、怪しいオクスリでも出ているのかしら」
「怖いこと言うなよな。オレは動物にはやたらと懐かれるんだよ。特に、地竜とかにはな」

 

前回・次回

前回(21話)・次回(23話)

 

反省会

 今回は禁歌の内容がとうとう開示される回となりました。けれど、この生物を創造するという魔法の危険性が、あまり上手く描けていないような気がします。とあれ、生物を創造する能力というのは、普通に禁じられてもおかしくないと思うので、ここはまあ良い気もします。

 問題は、禁歌の番号でしょうか。

 ネタバレになりますが、このお話で禁歌はもう一つ登場します。けれども、たった二つしか禁歌が出ないのに、いきなり第四番を出すのは良くないのでしょうか。それとも、他にはどんな禁歌があるのか、と期待される効果はあるのでしょうか。

 

 あと、動物の鳴き声ですね。これはどう表現すれば良かったのか。最初は地の文で鳴いた事実とその声に含まれた感情諸々を描いていたのですが、なんとも紙面に圧迫感を覚え、台詞形式にしてみました。好き嫌いの問題もあろうかとは思いますが、この辺りはどうするべきだったのでしょうか。

 個人的には、これでも良かったのかな、と。作風によりますね。

 

 もう一つは、隠密行動中の緊張感が足りない、ということです。これはつい会話を優先させてしまったが故なのですが、物語のメリハリという意味では、ちゃんと緊張を含ませるべきでした。これは明確な反省点ですね。次のお話の時には気を付けます!

 この反省会は次の作品のために催していますので、こういう明確な反省点は勉強になります。自分で言っておいてなんですが。

 

 

スポンサーリンク

 

前回・次回

前回(21話)・次回(23話)