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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』27話

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前回(26話)・次回(28話)

 

目次

 

前回のあらすじ

 ミュゼルの圧倒的異能力によって追い詰められるラウル。何度致命打を与えようとも、敵は一向に気にした様子すら見せない。

 絶体絶命の危機に現れたのは――ドロシーだった。

 

 ということで、第一章が今回にて終了です。次回からは二章が始まり、ようやく物語の本質へと移っていくのでしょう。かなり長く感じられた方もいらっしゃるでしょうけれど、残念ながらこのお話は全三章を予定しております。つまり、あと二章あるわけですね。

 二章は基本的に、禁歌との闘争という感じになるかと思われます。また、剣の英雄バロックアートとの決着も描くつもりです。

 で、三章ではいよいよミュゼルとの決着なのですが……そこまではちょっと長そうですけどね。

 ということで、本編です。

 

 龍と奏でる英雄譚――27話

 ラウルの頭部が易々と粉砕される――寸前。少女の澄んだ、美しい怒声が響いた。
「そこまでよ、罪歌七音」
 声の直後、教会が――吹き飛んだ。

 

   ▽

 教会のステンドグラスが砕ける快音。
 教会の内装全てを吹き飛ばす程の破壊の本流。教会内の椅子も死体も、床も壁も見境無く破壊し尽くす、破壊の衝撃が迸った。
 色鮮やかなステンドグラスの破片が舞い上がる中、太陽の光を背景に出現した陰がある。
 ――ドロシーであった。
 彼女はステンドグラスを固定していた敷居の上に立ち、教会内部を睥睨していた。
「まだトドメを刺せていないのですが、まあよろしいでしょう。新たなお客様でございますか。ええ、実に愉快でございますとも。ねぇ――ドロシー様」
「貴様に名を呼ばれたくはないわ――罪歌七音」
 多量の粉塵が巻き起こる中、ミュゼルは平然と立ち上がっていた。暢気な顔で、自身の服に付着した埃を払っている。しかし、汚れはどれだけ払ったところで落ちはしない。さながら、ミュゼル自身の心の穢れのように。
「それにしても」
 と、ミュゼルは世間話でもするような調子でドロシーに視線を向ける。
「貴君の力は異常ですね。流石は伝説の末裔、というところでしょうか。わたくしのような普通の人間には、貴君は実に異様に映ります。化け物ですね」
 ドロシーが強い不快の表情を露わにした。舌打ちと共に、彼女はその腕を横凪に振るう。すると、それだけで破壊が生じた。
 爆音。
 ミュゼルが玩具の如く、吹き飛ぶ。全身の肉が抉れ、臓腑が撒き散る。それも一瞬のことであり、ミュゼルは即座に元通りになり、その表情に歪な笑みを湛えた。
 その時、音に反応したのか、ラウルが目を開いた。腹に穴が開き、彼は今にも死んでしまいそうだ。それでも、彼はドロシーの方を見た。そして、
「……ドロシー?」
 ラウルの声には、疑問の色が混じっていた。
 ドロシーは半ば泣きそうになりながら、自身の右腕を背へと隠した。
 現在、彼女の右腕は人間のモノではなくなっている。皮膚の代わりに、夥しい鱗が右腕を埋め尽くしている。爪の鋭さは一本の刃物の如く。大きさは腕一つでラウルの身長程もある。
 明らかな、人外の豪腕。
 ドロシーは刹那瞑目すると、自身の人間性をも消滅させた。冷酷にミュゼルを見やると、そこに色のない声をぶつけた。
「貴様の能力は、妾にもわからない。でも、貴様を痛め付けることくらいはできるのよ」
「ふふ、わたくしに対する侮辱でございますか? わたくしが貴君の力に敗北する、と? ただ肉人形のように殴打を受け続けると? 舐め過ぎですねえ。まったく、今の貴君は分を弁えていないご様子。正して差し上げます。そして、わたくしの『忠誠』をお見せしましょう!」
 大剣を構え、ミュゼルが跳躍する。その細い、鍛えられていない肉体の何処にそのような力があるのか。大剣の重さをものともせず、彼は高く高く、飛び上がった。
 その勢いのまま、大剣をドロシーへと叩き込む。
 ドロシーはそれを右腕で受けると、反撃に蹴りをぶち込んだ。ミュゼルの腸が吹き飛ぶが、敵は一切の減速なしで拳を放った。
 一打毎に、世界が揺れる。一交差毎に、世界が軋む。
 それは正に人外の戦。
 戦闘の余波により、やがて教会は原型を失う。
 全てが消え失せた今、人外たちはここに留まる意味を失った。ドロシーの殴打によってミュゼルの肉体が爆散し、後方へと肉片が飛び散る。
 それをドロシーは追撃し、彼女たちの姿は徐々に教会から遠ざかっていった。

 

   ▽

「ま……待て。待ってくれ、ドロシー」
 教会の残骸の中、腸が零れ、意識が消える間際。ラウルは既に姿を消したドロシーに、必死の制止を掛けていた。
 けれど、彼の声はドロシーには届かない。仮に、ラウルの声がドロシーに届いていたとして、きっと彼の言葉はドロシーの心には届かない。
 先に裏切ったのはラウルの方なのだから。
「貴方は……ラウル・シーンス様ですね」
 死の間際のラウルに対し、聞き慣れない声が浴びせられた。
「この戦闘跡……罪歌七音と何者かが交戦したと見るべきですか。申し訳ありません、ラウル様。僕は聖歌隊として……貴方を」
 そこでラウルの意識は……失せた。
 遠くなる意識の底で、彼はいつかの温もりに手を伸ばそうとしていた。

 

   第二章

 

次回・前回

前回(26話)・次回(28話) 

 

反省会

 今回の反省ですが「▽」の過度な使用が挙げられます。わたくしの小さな拘りなのですが、場面の区切りはスペースを七回入れた後に「▽」で締める、という風にしております。が、ここはブログ上なので可視性を優先して、スペースは三回だけです。これが妙に悔しいのですが、それはともかく。

 ともかく、問題はこの「▽」に頼りすぎているということです。ぶつぎりの印象がどうしても拭えなくなってしまうので、多用は厳禁かもしれません。個人的には、最も解りやすい部分で挿入しているつもりなのですが、それでも多すぎは問題であるに違いありません。わたくしが好きだからといって、全員が好きなわけではありませんからね。

 ▽を使って場面を区切るのが格好良く感じるのですが、数を絞った方がより格好良さに拍車がかかると思われます。ですから、次作では量を減らしていきます。

 

 

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前回・次回

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