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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』28話

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前回(27話)・次回(29話)

 

目次

 

前回までのあらすじ

 正直、これを読んでいる方も、ここを読んでいる方もいないと思うのですが、一応申し上げますと、ここは読まなくても大丈夫な場所です。読んだところで特に意味は無く。

 というのも、「続きを読む」を本編に入れたくない故の前書きや前回までのあらすじですから。「続きを読む」がなければ当ブログに問題が生じますので、仕方が無く彼に頼る必要があり、かといって本文に入れるのは癪なので強引に前書きを作っているだけなのです。だから、ここは読み飛ばしてくださって結構ですとも。

 

 ということで、第二章の始まりです。

 ドロシーを置いて行き、置いて行かれてしまったラウル。果たして、彼は……

 では、本編へ。

 

龍と奏でる英雄譚――28話

 

   第二章

 硬質な痛みが、ラウルの意識を覚醒へ導いた。背を押し上げる冷たい感覚と無機質な感触。
「何処だ、ここは」
 目を開くと、そこにはカビに犯され尽くした天井がある。ジメジメと、鬱屈した空気で満たされている。
 この気色の悪い雰囲気は、ラウルの心をも犯してきた。いや、寧ろ、ラウルの心から染み出した暗さが、この部屋の雰囲気を淀ませているのかもしれない。
 ラウルは自身の胸が呼吸により上下していることが、酷い大罪に思えてならなかった。
「早く……行かねえと」
 呟きに力は無かった。彼は使命感に突き動かされ、鉄製の床へと手を着いた。ふらつきながらも、ラウルは立ち上がった。
 そこへ、声が掛けられた。
「どちらへ行かれるおつもりですか、ラウル・シーンス様」
 声の方向へと、ラウルは惰性で視線を向ける。視線の先には、柔和な笑みを浮かべた男がいた。歳はラウルよりも少しばかり上だろう。優しげな目元には、けれども疲れ切ったような皺が刻まれている。
 細い目だ。目を閉じているのか、開いているのかもわからない。
 情けない表情をした、優男であった。
 だが、ラウルは一目見るだけで、目の前の人物がただ者でないと直感した。まず、肉体の鍛え方が洗練されている。無意味に鍛えただけでは付かない筋肉の付き方だ。
 また、彼の持つ雰囲気には無駄がない。下手に人を威圧することもなく、かといって無防備では決してない。
 何よりも、男が腰に用意している剣が、彼の立場を明らかにしている。
 男は胸に右手を当て、残った左手で自身の腰を掴んだ。敬礼だ。
「お初にお目に掛かります。僕はドネート家の次男。クルス・フラ・ドネートと申します。以後、お見知りおきを」
「聞いたことがある名前ですね。確か、聖歌隊の団長様のお名前だったような……」
「はい。隠したわけではありませんが……」
「わかってますよ」
 クルスはホッとしたように息を吐き出すと、ラウルの姿を嫌味にならない程度に観察した。
 ラウルも、クルスに悪意がないことを悟り、彼の観察にジッと耐えた。
「一応は治った、と見て良さそうですね。安心しました」
「ありがとうございます。オレの傷は団長様が治してくださったんで?」
「正確には、僕を含めた聖歌隊の面々が……ですがね。酷い傷でしたが、全聖歌隊が貴方一人を治すことに集中しましたので、どうにか。多少の後遺症は覚悟しておいてください」
「オレ一人に集中した?」
「……貴方しか生き残っていませんでしたから。あの場には、我々の先行部隊もいたのですが、罪歌七音には及ばず」
 クルスは顔を俯かせて、自身の悲嘆を言外に語った。しかし、ラウルは彼に構っている暇はない。今までは治して貰ったことに感謝するべき場面だったが、感謝が終わった今、話すべきは別にあった。
 ラウルは遠慮無く、しかし敬意は残し、質問を投げる。
「あの場にいた女の子。白い髪に、赤い瞳の女の子はどうなりましたか? オレの代わりに罪歌七音と戦った筈なんです。無事、でしょうか?」
 ラウルの問いに、クルスは静かに首を左右に振るった。
「わかりません。教会が破壊された直後、罪歌七音の『忠義』と白髪の少女が戦闘をしていたことは掴んでいますが、消息は不明です。おそらく、今は王都の外で戦闘中なのではないでしょうか」
「すぐ、行かねえと」
「貴方が行って、何になりますか?」
 動き出そうとするラウルに、クルスは何気ない声音でそう言った。ただし、クルスは天然で言ったのではなく、その細い瞳に試すような光を灯している。 
 クルスの鋭い言葉に、ラウルは動きを簡単に止めてしまった。
 ラウルが歩き出そうと鳴らした靴音だけが、鉄の部屋に反響して鳴り響く。虚ろな響きだ。
 行って何になる、という言葉は必殺の意味すら持って、心を強く打ち付けてきた。肉体の痛みでは味わわない、腐るような痛みに心が削られる。
 絶句した。
「ラウル様。貴方の役割は罪歌七音討伐にはありません。それは僕たち、聖歌隊の仕事です。まあ、僕たちの力が足りていないのは事実です。そこは我々を恨んでください」
 ラウルは返事も忘れて、呆然とクルスの顔を見る。
 彼が何を言っているのか、わからないのだ。理解出来ないのだ。理解したく、ないのだ。
 クルスは気の毒そうに表情を歪め、諭すような声音で、
「貴方のお気持ち、痛いくらいに理解できます。なんて、こんなことは言われたくないでしょうがね。しかし、わかります。守りたい人を守れない、痛み」
 そんなもの、とクルスは冷酷に言い放った。
「誰にでも経験がありますとも」
 クルスの言葉が脳内で何度も繰り返される。追い出そうとしても、自身の脳が新たに言葉を作り出してしまう。ようやく、ラウルは気が付いた。
 ラウルはドロシーが大事だったのだ。恩人という以上に。
 まだ会ったばかりだ。他人と言っても良い筈だ。 
 それでも、ラウルはドロシーに傷付いて欲しくないと、そう思ったのだ。だからこそ、彼はドロシーを置き去りにしたのだから。
 ラウルの選択は間違っていた。
 あの時、ラウルがドロシーを置いて行かなければ、結果は変わったかもしれない。
 少なくとも、守りたい人が手の届かない場所にいる。そんなことにはならなかった。

 

前回・次回

 前回(27話)・次回(29話)

 

反省会

 今回から新キャラのクルスが登場します。で、個人的には彼は好きなのですが、多くの読者さんから賛同を得られないかなと想定しております。彼はかなり我が強く、決して他者の言を考慮に入れないので、ともすれば自分勝手にしか見えないだろうと思われます。そして、その自分勝手という意見はまったく以てその通り! わたくし自身、そのような想定で書きましたから。

 しかし、人気という一点において問題ではなかろうかと、書いたモノを読み直して思うわけです。正直、わたくしの最大の欠点はこの辺にあるのかな、と。つまり、キャラクターが自分の勝手でしか動かず、また、全員があまりにも強引……ということです。キャラクター同士が関係しておらず、自分の都合だけで動くのです。話の流れすら無視して。ですから、因縁の付け方一つとっても不自然なのでしょう。

 

 わたくしに読者目線が壊滅的に不足しているということです。故に、客観的にキャラクターを見つめることができない。設定上、このキャラクターはこうする、と考えて、自分の中では不自然ではなくむしろ当然という意志を尊重しすぎております。もっと深く読者さんのことを考えることが出来れば、勝手に改善できるはずなのですが。

 次作では、読者さん目線を忘却せぬよう心します。

 敢えて言います。期待していてください、と。

 

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