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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』31話

龍と奏でる英雄譚
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前回(30話)・次回(32話)

 

目次

 

前回のあらすじ、というか前書き

 最近は『小説家になろう』というサイトにもお話を載せようかな、という計画を持っております。というのも、どうやらブログでネット小説を載せるのはあまり需要がないと見たからです。

 需要がなくとも、わたくしはこのブログをそういう風に使っていくつもりですが、ブログだけではどうにも限界があるように感じています。反省会という形で勉強はしているものの、結局は他者からの意見を取り入れることが最適の勉強だと考えているからです。

 

 まあ、それはともかく、前回はラウルの処刑の詳細が詰められ、クルスがなんだか意味深なことを言っての終了でした。

 で、もちろん今回はその続きです。

 いざ、本編へ。

 

 龍と奏でる英雄譚――31話

  

  ▽

 

 この世のあらゆる温もりを否定する檻の中で、ラウルは一人、膝を抱えて窓の外を眺めていた。夜の暗闇には、何も見い出すことができない。
 ラウルはクルスの言っていた言葉の意味をしきりに考えていた。彼にはそれくらいしかすることがなかった。仮に考えることを止めてしまえば、今度はドロシーの安否が気になって仕方がなくなる。
 ラウルはそれを直感的に悟っていたが故に、無心に、考えることを放棄して、クルスの言葉を考えていたのだった。
 何もできないのだ、とクルスは言った。
 その通りだと、ラウルは思った。
 真の英雄になれますように、とクルスは言った。
 意味がわからない、とラウルは思った。
 何もできない自身が、一体どのような奇跡を経れば真の英雄になれるのだろうか。そもそも、英雄になったところで、何の意味があるのだろうか。
 どうせ、ラウルには何一つ守ることなんてできないのに。
 ラウルは夜通し考える振りをして、結局、一睡もすることがなかった。

 

   ▽

 翌朝。闇はとっくの昔に朝日に薙ぎ払われて、世界は一面の光に埋め尽くされている。清涼な朝空は、その輝かしさで以てラウルを嘲笑っている。
 無為に座り込んでいるラウルへと、声が掛けられた。クルスだ。
「ラウル様! 吉報ですよ! 貴方にお客様です。本当は駄目なのですが、僕は席を外します」
 クルスはそのまま、誰かを通すと、彼自身は消えてしまった。
 ラウルは顔を俯け、呆然と床を眺めている。そのような情けない彼の頭に、ハープル色の音声が降り注いだ。
「ラウルくん」
 思わぬ声に、ラウルは反射的に顔を上げた。そこにいたのは――ドロシーであった。
「生きてたのか……ドロシー」
 ラウルの声に、俄に歓喜が滲む。 
 ようやく、ラウルの精神は安堵を享受した。ドロシーが死んでいるかもしれない、というのは、それだけ重く、ラウルの心を押し潰していたのだ。
 ドロシーはラウルに頷きを向けると、周囲を怪訝そうに見渡した。
「ラウルくん、ここから逃げましょう」
「え? なんで……」
 ラウルの返答も耳にせず、ドロシーは鋼鉄の檻を易々と引き裂いた。昨日、クルスによって曲げられた鉄格子は、ドロシーの持つ人外の破壊によって人一人が十分な余裕を持って抜けられる穴をこさえていた。
 ドロシーがラウルへと、その細く白い手を伸ばす。
 ラウルはそれを無視し、代わりに乾く唇を舌で濡らした。
「オレはここでやることがある」
「処刑されるのでしょう?」
「本当に処刑される訳じゃねえって。オレに演技ができるのかはわからないが」
「貴方は民衆に石を投げられるのよ?」
 そのようなことは大したことではないと、ラウルは感じていた。
 ふと、ラウルはクルスとの昨日のやり取りを思い出した。彼は、敢えて自身に罰を与えて、少しでも気を楽にしようとしていたと、そう言っていた。そして、その魂胆が浅ましい、とも。
 クルスの浅ましさを、今、ラウルも手に入れようとしていた。
 民に石を投げられることによって、無力な自身を否定して貰いたいのだ。ラウルはそのことに気が付いたが、それで構わないと諦めた。
 ラウルはドロシーから目を逸らし、小さな声で意見した。
「石を投げられるくらい、問題ない」
「ただ石を投げるだけじゃないの。貴方は沢山の呪詛を浴びるわ。恨みの声を受けるわ。謂われのない暴言に、きっと苦しむのよ」
「ちょっと悪口言われるだけだ。慣れてる」
「貴方は……」
「気にしない。オレは何も、気にしない」
 ラウルの素っ気ない言葉に、ドロシーは大きく右足で床を打った。地震と勘違いしてしまいそうな程の衝撃が、周囲を襲う。
「貴方が気にしなくても……妾が気にするのよ」
「どうしてだよ? オレとあんたは関係ないだろ。雇い主と雇われの関係で、脱獄の援助までして貰う義理はないぜ。オレのことはもう放っておいてくれ」
 ラウルはあくまでも頑なであった。
 いや、彼の意見には明確な信念は存在していない。今のラウルは空っぽなのだった。穴の開いた鉄格子のように、彼には自分の存在意義が掴めていないのだ。
 それに、意味がないと、そうも思ってしまう。
 ドロシーの手を取れば、脱獄は簡単だろう。あのミュゼルと戦闘を行って、おそらく勝利はしていないのだろうが、生存に成功している。そのような彼女がいれば、ラウルは何もせずともこの鉄の密室から逃げられよう。
 ただ、そうなると、ドロシーにはラウルという名のお荷物が付着してしまう。
 ラウルはそれを拒んだ。
「ラウルくん、幾ら形だけとはいえ、貴方が処刑される理由なんてないわ」
 ドロシーは言う。そう言うのだ。
 だが、理由ならあると、ラウルは心の中で呟いた。その声は、届かないけれど。
「石を投げられたら痛いわ。暴言を吐かれたら痛いわ。どうして無実の貴方が、そのような痛みを受けないといけないの?」
 放っておいて欲しかった。
 今のラウルには、ドロシーと会話を行う価値がない。
 昨日、ラウルはドロシーの存在を諦め、そして売ったのだ。
 民を騙す為にドロシーを悪役にし、ミュゼルを偽りの英雄にした。オーケストラ殺しの罪を、勝手な判断で共有したのだ。
 その独断は、ラウルが無意識下でドロシーの生存を疑っていたからこそ出現した意見に違いない。ラウルはまたしても、ドロシーのことを裏切ったのだ。
 会話をする資格も、助けて貰う価値も、一緒に行く理由もない。
 ラウルは素直な気持ちを、ドロシーへとぶつけた。
「あんたには関係ねぇ。オレの命なんて……誰も必要としてなんか」
「言わないで。そんなに悲しいことを、妾の前で、貴方が言わないで」
 ラウルの言葉を、ドロシーは否定した。
 ラウルは悩んだ。ドロシーに自分を見捨てさせる為には、どうすれば良いのだろうか、と。
 そもそも、どうしてドロシーがここまで肩入れしてくるのかも、まったくの不明であった。強い訳でもないし、特段容姿に優れているわけでもない。話が巧い訳でもなければ、長い時間を共にした訳でもなかった。
 ラウルは彼女のことを、ある意味では特別視している。それは恋心ではないのだろうが、しかし、それに近いモノだと思われる。
 ラウルの場合、彼女に少しだけ救われている。だから、彼が特別ドロシーを贔屓することに矛盾はないと言える。
 一方で、ドロシーがラウルに肩入れする理由はない。彼女に対してラウルは何もしていないし、何もできていないのだ。
 ラウルはふと、目の前の少女のことを理解できていない己を知った。

 

   ▽

 

前回・次回

 前回(30話)・次回(32話)

 

反省会

 さて、今回の反省会はドロシーについて、です。彼女はラウルにだけはとても良い人なのですが、その理由が後述となっているのは問題ですよね。少なくとも、なんだか意味深な台詞とかを時折入れ、伏線の形とするのが良かったかもしれません。

 まあ、一応、数カ所、彼女がラウルへと高い好感を抱いている理由の伏線は入れております。が、それをあまりにも隠しすぎて、読者さんが伏線として認識できていないかもしれません。

 バレるのは論外ですが、解らない伏線は伏線として機能しません。

 伏線の入れ方にも工夫を……今回の教訓です。

 

 

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前回・次回

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