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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』32話

龍と奏でる英雄譚
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前回(31話)・次回(33話)

 

目次

 

前書き

 みなさん、こんばんは。束木志埜です。

 新作のプロットができたは良いのですが、それがホラーテイストを交えた作品で、怖くてホラーを読んだことのないわたくしには書けないかもしれない……という問題に直面しております。ホラー小説って怖いです。ですから、余程面白そうでない限り読もうとは思わないのですが、勉強のために数作読んでおいた方が良いかもしれません。

 ということで、昨日から取り敢えず、ネット上で人気のホラーなスレッドに目を通しております。そして、今、こうやってPCと向かい合っていると、背後が気になって仕方が無い現状。

 

 では、本編へ。

 

 龍と奏でる英雄譚――32話

 

   ▽

 

 ドロシーの存在は尊いモノだ。
 ラウルの存在は穢れたモノだ。
 彼女を穢してしまうくらいならば、死を選んだ方がまだまだ救いのある話であった。
 それも、偽りの見せ掛けの、そのような下らない死ならばどちらを選ぶか迷うことすらない。
 ラウルの根底には、やはり母の存在が見え隠れしていた。子を愛するはずの親にすら見放された、価値のない自分自身。母が叫んだ、価値のない自分。
 故に、ラウルの生き方は自罰的だ。
 彼は常に、誰かに許しを求めている。罰を求めている。その上で、誰かに愛されることを、救われることを、守られることを、酷く厭う。――怖いから。
 ラウルにはドロシーの伸ばす手が救いであると同時、破滅への一歩であるようにも思われた。
 きっと、無力な自分はいつか、あの手を腐らせてしまう。守ることなんてできないから。
 いつかドロシーを深く傷付けてしまう。
 それくらいならば、とラウルの心に暗い感情が宿った。
 ドロシーはどうしてもラウルのことを諦めてくれない。ラウルを捨てることは、彼女の幸せに繋がるというのに、彼女は頑なに幸せを享受しようとしない。
 ラウルはドロシーに幸せになって欲しい。
 であれば、方法は簡単だ。
 ドロシーからラウル・シーンスを助ける理由を剥いでしまえば良いのだ。
 幸いなことに、不幸なことに、ラウルにはドロシーの心の弱点が薄らと見えていた。ラウルの視線が音も立てずに、ドロシーの右腕へと向けられた。
 ドロシーの右腕。今でこそ、そこにあるのは美しい右腕だ。だが、ミュゼルとの戦闘時、彼女の腕は怪物の腕となっていた。
 ドロシーは、あの腕をラウルに見られた一瞬、必死に隠そうとしていた。
 つまり、彼女にとってあの腕は不本意な存在なのだろう。
 ラウルは探る。ドロシーが――最も傷付くであろう言葉を。
 このままドロシーがラウルといても、彼女は傷付く一方だ。深く深く、癒えないような傷を負うことになるのが、ラウルの目にはありありと確認できた。
 回復不能の傷を与えてしまうならば、軽い傷を負わせて、自身から遠ざけよう。
 ラウルの口元はわなわなと、何かを堪える震えを浮かべている。
 彼は言いたくもない、思ってもいない、ただドロシーを傷付ける為に作った言葉を、彼女へと捧げた。それが――彼女の為だと盲信して。
 ラウルは言った。
「オレに関わるな、ドロシー」
 心に燻る淡い躊躇いを消すべく、ラウルは大きく息を吸い込んだ。
 そして。

「――気持ち悪いんだよ、あんた」

 ドロシーは声を出すことも出来ず、反射的に自身の右腕を背に隠した。もう遅い。
ミュゼルとあんたが戦ってるとき、オレァ確かに見たね。あんたの腕が人間以外のもん……人外のもんになってたところをな! 寄るなよ、化けもん。オレを連れて行って、取って喰うつもりかよ?」
「そんなつもり……あるわけが」
「さっさと消えろ! オレは二度とあんたの顔なんて見たくねえ。……怖いからな」
 ラウルの言葉は残酷を極めた。言っているラウルの心すらをも犯す、差別の渦。謂われのない中傷程、心を痛め付けるものはないだろう。
 ドロシーの変化は一瞬のことであった。
 瞳が潤み、整った彼女の表情が激しく歪む。声を押し殺し、サッと彼女は顔を手で隠した。肩が見ていられないような震えを帯びている。微かに、嗚咽が聞こえる。
 ――ドロシーは泣いていた。
 ドロシーはその場に座り込んでしまうと、そこで声もなく――涙を流した。

 

   ▽

 

 ラウルは胸の痛みに、暗い喜びを感じ取っていた。
 汚らしい牢獄には、既にドロシーの可憐な姿はない。彼女はあれから少しだけ泣き続けると、何の前触れもなく立ち上がった。
 彼女の顔には、そのとき、既に涙の形はなかった。けれども、彼女が確かに落涙していた証拠として、白目の部分が赤いインクを垂らしたようになっていた。
 ようやく、ドロシーが諦めてくれた。これで彼女はラウル・シーンスという名の失敗作とお別れできるのだ。吉報以外の何物でも無い。
 ……虚しい達成感だけが身体を巡っていた。
「自分がされて嬉しいことだけを、他の人にはしなさい。オレは今、正しいことをしたんだ」
 自身を諭すような声音で、ラウルは呪いの言葉を吐いた。
 そも、この呪言こそが今の状況を招いた発端なのだが、ラウルはそのことにも気付けない。
 幼い頃から培われた精神の歪は、自身の足りなさを痛感して、このとき崩壊していた。
 母から虐げられ、英雄としては欠陥品で、民からは蔑まれ。初めて自身を理解してくれるかもしれないと夢想を向けた少女には手を振り払われ、その初恋の相手は自身よりも優れた英雄の元へと行ってしまった。
 そのような地獄の中、ドロシーだけが手を伸ばしてくれたのだ。
 そして、その彼女を自身の判断で危険に晒してしまった。
 ラウル・シーンスが全てを拒絶してしまうのには、それだけで十分だった。苦しみの中に唯一の救いを見つけ、その救いを自らの手で害しかけた。
 それだけの事実が全てであった。
 ラウルはドロシーが泣き蹲っていた場所をしきりに見つめ、己がしでかした悪意の結果を静かに観察していた。
「ラウル様……貴方は何をしたんですか?」
「クルスか……放っておいてくれ」
「くよくよしてばかりですね。大切な方が生きていたのです。喜びに身を委ねれば良いでしょうに。本当に貴方は損をする性格だ」
「ドロシーはどうした?」
 ラウルの無機質な問いに、クルスは呆れたように首を振った。
「僕は声を掛けることもできませんでしたよ。あの幽鬼のような目を見てしまうとね。聖歌隊として情けなくはありますが……一応、繊細な感覚を持つ女性隊員に任せました。けれど、彼女も振り解かれてしまいましたよ」
「そうか」
「かなり傷心していましたね。ただし――まだ、彼女は諦めていません」
「……は? いったい、何を諦めて」
「貴方のことに決まっている。彼女はここを出て行く前に……『これ以上ラウルくんを虐めないで。場合によっては妾は貴方たちに容赦しないわ』と。それだけを言い残していきました」
 何故、という疑問がラウルの脳内で何度も飛び交う。ドロシーは諦めた筈だ。ラウルに助ける価値がないと、知った筈なのだ。だというのに、何故――
 誰もラウルに答えをくれなかった。

 

   ▽

 

前回・次回

前回(31話)・次回(33話)

 

 

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反省会

 全体的に、手慣れていない感が良く出ておりますね。このお話は、わたくしの未熟さの露呈として、似たような雰囲気、文章、が続くという構成になっております。どうやら、わたくしはくどいようです。これは反省ポイント。

 あと、登場人物の名前を地の文に登場させすぎなのではないか、という疑問も挙がってきております。これっていけない部分なのかしら?

 いえ、まあ、気になったのでちょっと直しておこうかな、とも思います。

 

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