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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』33話

龍と奏でる英雄譚
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前回(32話)・次回(34話)

 

目次

 

前回までのあらすじ

 ドロシーに厳しい言葉を投げかけてしまったラウル。涙を流す彼女を見て、ラウルは昏い喜びのようなモノを見出す。そのことに罪悪感を抱きながらも、いよいよ彼の処刑が開始される、が……

 

 ということで本編です。

 

 龍と奏でる英雄譚――33話

 

   ▽

 

 三日経ち、今日はとうとうラウルの処刑日であった。
 幾ら偽りの死とはいえ、処刑の様相には手を抜けない。ラウルは目隠しをされ、手は後ろ手に縛られ、足に重い鉄球を付けられている。
 歩く度に、地面と鉄球が摩擦する無機質な音が響いた。
 ラウルはクルスの先導に従い、闇の中をひたすらに歩いた。彼が歩くと、まるでそのこと自体が罪かのように、民たちが怒声と罵倒を放つ。罵りの声は、ラウルの胸を容赦なく打つ。
 助けようと思った人々からの拒絶は、想像以上に痛みを伴った。
 しかし。
(ドロシーの時よりは痛くない)
 その事実にほっと安堵して、ラウルは処刑台へと上った。
 直後やってきたのは、声による砲撃だ。
「よくも私の夫を!」
 オーケストラか聖歌隊か、どちらかは知れないが、そこに旦那が居たのであろう女性が、涙ながらに叫んだ。内心、ラウルは謝罪した。女性の怒りを本当に向けるべきなのは、ラウルではなくミュゼルなのだ。
 つまり、あの女性は自身の夫の仇を討てない。その上、永遠に真相を把握できず、見当違いの相手を恨み続けなければいけない。
「何の罪もないオーケストラ様たちをよくも!」
 オーケストラたちは、一心不乱に歌い続けた。どれだけ苦しかろうとも、どれだけ辛かろうとも、オーケストラたちは民の為に一日中歌い続けた。
 ここは音楽国家フーテ。音楽のことは、みんな知っている。全員が身を以て理解しているのだろう。
 一日中歌い続けることの苦しみを、皆が理解していて、そして、そのような苦しみの中でも歌うことを止めないでいてくれたオーケストラたちに心底感謝している。
 ラウルは何も言うことができない。
 本当に、この処刑は正しかったのだろうか、という疑問すら湧いてきた。
 結局、聖歌隊ミュゼルを捕らえることができずにいる。あれだけ目立つ男がどうして見つからないのかは、ラウルだって知らない。
 今なお、罪歌七音は健在だ。まだ、この王都の安全は不完全。
 ラウルの懸念をよそに、いよいよ処刑の幕が上がる。最初は、聖歌隊の団長であるクルスが、民へと向けて今回の処刑の目的を語り聴かせることになっている。
「諸君。ここに大罪人――ラウル・シーンスを連れてきたのには理由がある。かの罪人は、この国の宝であるオーケストラを殺害した。それも一人や二人ではなく――全員を、だ!」
 改めて聞かされた事実に、民たちは言葉を失う。
 やがて沈黙はどよめきに変わり、最後には絶叫へと変化した。
「殺せ! ラウル・シーンスを殺せぇ!」
 声は溢れて、揃えられる。処刑場に集まった人間の数は、百を超えている。オーケストラ不在故、この国の人間は絶えず奏唱による生活魔法を唱えなければならない筈だ。今までオーケストラたちが用意してくれていた魔法を、自分たちで用意しないといけないのだ。
 忙しいだろう。時間などない筈だ。
 だというのに、ここには百人もの人間がいる。
 皆、犯人が心底憎いのだ。生活を放り出してしまうくらいに。
 クルスは表情を歪め、罪を告白するような声音で、ラウルの罪を広めていく。
「更には、オーケストラを守る為に派遣した聖歌隊も、ラウル・シーンスはその手に掛けた。我々の心の拠り所であった教会も、彼の手によって破壊された!」
 痛みを堪えるような表情が、処刑場全域に迸る。それでも、クルスは止まれない。
「かつて――この国、この世界は六人の英雄と一匹の竜に救われた。そして、皮肉なことにも、ここにいるのはその英雄の一人であるラウル・シーンスだ」
 英雄は、この世界では竜と並ぶ救いの象徴なのだ。
 その英雄の暴虐は、もしかすると民の心を痛めつけてしまうかも知れない。けれども、幸いなことに、ラウル・シーンスは他の英雄とは異なる。
 無の英雄。
 英雄としての力を発揮できない、全世界の恥曝し者。英雄の中の失敗作であり、勇ましい英雄譚を汚す存在。
 ラウル・シーンスは他の英雄とは違うのだと、そう宣言すれば、誰もラウルの処刑に心を痛めない。だから、クルスは宣言する。
「ラウル・シーンスは英雄ではない! 英雄の名を語る――罪人だ!」
 雄々しい宣言と同時、ラウルの瞳を隠していた布が取り払われる。
 見えた。
 そこにあったのは、ラウルの視野を満たすのは――憎悪一色。
 殺意を極限にまで煮詰めた、人間のしてはいけない表情を、目の前の誰もが浮かべていた。
 見つめられているだけだ。
 だというのに、ラウルの心は押し潰されるような威圧を感じた。
 全身から生命の感覚が抜け落ちていく。瞳の一つ一つが、ラウルを殺す心持ちで存在している。心が貫かれる、鋭利な痛痒。
 世界は絶望で満たされていた。
「さあ、諸君! 今、このとき! ラウル・シーンスは死を迎える。犯した罪の重さは、ラウル・シーンスをここで殺し尽くす。命の尊厳も、魂の尊さも、この罪人には存在していない。ラウル・シーンスを殺害するのは、天でもなければ我々聖歌隊でもない! 諸君、諸君が手にしている、その石だ。ラウル・シーンスを諸君の手で――」
 クルスは暴れるように……言い放った。

「殺せ」

 

   ▽

 

前回・次回

前回(32話)・次回(34話)

 

 

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反省会

 たくさんあるのですが、根本の問題としてわたくしはライトノベルを上手く書くことができぬのやもしれません。今日、そのような気がしてとても苦しい心持ちになりました。

 ライトノベルは凄いと思います。

 純粋に面白いだけを追及した小説形態であり、そこには文章力や文学的深さだなんて曖昧なモノが介在せず(もちろん、文章力や文学的深度も多いにこしたことはありません。現に、文章力の高い作品ばかりです。正直、わたくしはどの作家さんにも届いておりませんから、羨望を募らせる毎日です)、純粋に「面白い」か「面白くない」かだけで判断されるわけです。

 この二択は中々に残酷な選別です。

 けれど、ライトノベル作家さんは皆、その残酷な選別を乗り越えたわけで……

 

 どうにも、わたくしはそこに至るまでの実力がないようです。努力不足ですね。才能も足りていないのでしょう。

 

 まず、わたくしには読書経験が少ないのかもしれません。面白い探しをせねばなりません。面白い探し……

 

前回・次回

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