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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』34話

龍と奏でる英雄譚
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前回(33話)・次回(35話)

 

目次

 

前回のあらすじ、というか前書き

 最近、何が面白くて何が面白くないのかがまったく判断出来ていない自分に気が付きました。そして、そのような自分に大変愕然を覚えました。

 なんてこったい!

 これは大問題です。これからの発展先にも迷いますし、何をすれば良いのかもわからなくなりました。え、この悩みってもしかして、初歩の初歩だったりします? そうですよね、なんてこったい! なんてこったい!!

 こういうとき、何故だが世界に滅んでほしくなります。わたくしの恥と共に、世界に心中を強いたくなりますが、完全に自分に非があるだけなので、なんとも身勝手! 自身のミスであったり、不完全さを他者の所為にしてしまえば、その先には成長も成功も見込めません。なんてこったい……

 

 で、前回の内容ですが、ラウルの処刑が始まりました。

 ということで、本編です。

 

龍と奏でる英雄譚――34話

 

   ▽

 殺意の弾丸がラウルの全身を間断なく打ち据えていく。
 ラウルは目を開くこともできない、石の段幕に肉を裂かれていた。頬が斬れる感触があったかと思うと、すぐに腹に石が突き刺さる。
 痛い。
 痛い、痛い。
 痛い、痛い、痛い。痛い。痛い。痛い。痛い、痛い、痛い。痛い。痛い。痛い。痛い、痛い、痛い。痛い。痛い。痛い。痛い、痛い、痛い。痛い。痛い。痛い。痛い、痛い、痛い。痛い。
 息をすることすら許されない。空気を求めて口を開いた瞬間、石が歯を砕く。鼻はとっくの昔に潰されており、鼻血が溜まりその役割を果たさない。
 想像を遙かに超えた、残酷な痛みだ。
 気を失うことも許されない、痛みの海にラウルの精神は沈んでいく。
 石の一投毎に、深刻な呪詛が含まれている。叫ばれる恨みの声は、音楽国家フーテの色を絶望と悲しみで染め上げていく。
 この処刑によって、本当に誰か救われるのだろうか。
 恨みは、苦しみは、痛みは、悲しみは、怒りは、嘆きは、絶望は、殺意は――ラウルを殺せば満足してくれるのだろうか。
 わからない。
 最早、ラウルの身体に感覚は残っていない。
 痛みすら感じず、聞き届けねばならない民の恨みの声も遠い。
 これではまるで――、

「…………オレが救われてるみてぇだな」

 投石による処刑というのは、数ある処刑方法の中でも、上位の痛みと苦しみを与える方法とされている。即死させて貰えない処刑は、基本的にどれも残酷だが、投石のそれは群を抜く。
 肉は抉れ、骨は折れ、普通は目もあっという間に潰れてしまう。ラウルの場合は、防御の魔法を施されているので、目が潰れてしまうことはない。
 肉は抉れている。だが、骨はまだ折れていない。全てはクルスの魔法のお陰である。
 ラウルは痛みに呻くこともできはしない。
 処刑は数日に渡って行われる。本来ならば、罪人の肉体は土に半分埋められ、そのとき初めて投石が開始されるのだが、ラウルはただの罪人ではない。
 より、残酷に。より、苦しませて。
 殺さなくてはならない。
 一時間が過ぎ、二時間が過ぎても、ラウルは石に打ち据えられていた。
 百人の投石者たちは代わる代わる石を投げつけているが、それでも体力には限界がある。常に叫び、全力で石を投げ付けている民たちの消費は激しい。
 そこに、
「諸君! 一度、休息を取ろう。このままではラウル・シーンスを楽にしてしまう」
 クルスがそういう提案を示した。けれども、多くの者は止まらない。
 ラウルの肉体は、既に人としての形を保てていない。肉塊のそれと類似している。彼の足下には血溜まりがある。抉れて飛んだ、肉片がある。
 だが、意識はあるし、まだ彼は立っていた。
 あれだけの石を浴びても、ラウルはまだ立ち続けていた。座り込んでいて当然だ。処刑台で無様に倒れている筈だった。
 だというのに、ラウルは立ち、真っ向から民の石を全身で受け止めていた。
 ラウルの事情を知る者から見れば、ラウルの姿勢は――民の石が少しでも外れないように、民の苦しみを少しでも引き受けようとしているように見えただろう。
 その光景を見せつけられているクルスは、血が出る程に歯噛みした。自身の判断を疑ってはいない。それでも、耐えられない何かがあるのだ。
 クルスは大きく手を振り上げ、もう一度、民へと告げる。
「手を一度止めたまえ! この罪人を許すのはまだ早い!」
 クルスの言葉で聖歌隊が動き、石を掴む民を制止する。ラウルを打つ石の数が徐々に減少し、遂には零となった。
 聖歌隊は手早く、処刑台を布で覆い隠してしまう。処刑台の様子は、これで民には隠された。
 クルスは小さな声で、奏唱を綴り始めた。
 残った聖歌隊も、各自、クルスの歌へと自身の声を合わせていく。
 一つの奏唱に、複数人の奏唱を重ねることによって、その効果を上昇させているのだ。
 そして。
《作詞作曲ルビルグス・アレイ 月歌の八番 序章――赦しを乞うメイスへの賛美歌》
 奏唱が成った。ラウルの肉体が引き摺っていた痛みが消え、その代わりに、精神が揺れる。
「《赦しを乞うメイスへの賛美歌》は、痛みを消し、精神を落ち着ける効果があります。ただし、あまりにも痛みが酷い場合は、後者の効果が強く出過ぎて、意識があやふやになりますね」
 クルスの解説を、ラウルは覚束ない意識で聞き流す。
 クルス以外の聖歌隊は、先程とは別の奏唱を行っている。ラウルの外傷はあまり治す訳にはいかない。民に治療行為がバレてしまうのは拙いのだ。故に、体力を回復させたり、血を止めることに専念している。防御の魔法を強めようとして、誰かに止められている者もいた。
 聖歌隊の者は、ラウルに罪がないことを知っている。
 だからこそ、彼の傷が見ていられないのだ。
 自分たちの不出来の咎を、全てラウル一人に押し付けているのだから。
 現場に辿り着くのにも遅れ、ミュゼルも捕まえることができず、民の不安一つ独力でぬぐい去ることができない。これを不出来と言わずして何という。
 聖歌隊の一人が、オドオドしつつ、クルスへと進言した。
「クルス団長。既に、ラウル・シーンス様は限界です。処刑は成った、それでもう良いのではないでしょうか」
「いいえ、まだです。せめて一日は耐えて貰います。民が明日を歩く為、ラウル様……耐えられますね?」
「……問題ねえ」
 ラウルは割れた歯を噛み合わせ、それだけ答えた。その場にいる誰もが、その言葉を否定したく思ったに違いない。
 ラウル・シーンスは屈しない。
 その心には明確な目的はなく、あるのは深い諦念のみ。それでも彼は善人だった。自身の行いが誰かの為になるというのならば、それを拒むことはない。諦めない。投げ出さない。
 その考えの根幹には母の教えがあるとは言え、実行しているのは彼の心に他ならないのだ。
「治療はもう良い」 
 ラウルが低い声で言うのを、その場の誰もが無視した。
 クルスも一度頷くと、また新たな魔法を行使しようとした。
 そんなとき、事態が急変した。突如、布によって外部と遮断されていた処刑場の中に、一人の男性が駆け込んできたのだ。
 彼は顔面を蒼白にし、額からは止めどない汗が流れている。聖歌隊の団員だ。
 その男性は上司であるクルスに挨拶もせず、泣きそうな声で本題を告げた。
「ほ、報告します! 謎の化け物が複数! 王国内で――暴れています!」
 その場にいた全員の表情が、緊張によって凍り付いた。

 

   ▽

 

前回・次回

前回(33話)・次回(35話)

 

 

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反省会

 今回、反省会を半ば前書きでやりましたが、これは内容についての反省会です。

 まず、「痛い」の連打ですが、これは結構良くみる方法ですよね。けれど、やはり用法を守らないといけない系の武器ですよね。諸刃の剣です。

 これは表現力の高い方でないと使えませんが、やや安易に使用してしまったやもしれません。ただ、であれば代わりに何ができるのか、と考えると何もないような気もします。やらねばならないときはとことんやる。そういう覚悟が必要ですね。恥ずかしがったりすると、甘くなるだけですし。

 

前回・次回

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