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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』37話

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前回(36話)・次回(38話)

 

目次

 

前回までのあらすじ

 ラウルの処刑中に異変は発生した。突如王都を襲ったのは、見世物小屋に収納されていたはずの禁歌製の動物たち。それらによって、王都は壊滅状況に陥る。

 英雄としての役割を任せられたラウルは、その期待に応えることが出来るのだろうか!?

 

 という感じです、よろしくお願いします。

 

龍と奏でる英雄譚――37話

 

   ▽

 巨大な生物が、堂々とした足取りで町を歩いている。その大きさは建物を優に超え、一歩一歩が大破壊を生じさせている。
 火を纏った怪鳥が空を舞い、時折、地へと急降下すると人を啄む。
 首だけがやたらと長い生物が、その首を鞭のようにしならせて建物を、人を薙ぎ払う。
 それ以外にも、小型の動物が人を追いかけ、喰らっている。
 地獄と評するのも生温い、そのような惨劇が目の前では繰り広げられている。聖歌隊が必死に抗っているので、見た目よりも被害は少ないのだろう。
 それでも、見ていられない光景であることには変わりない。
 これが――禁歌の力。
 禁じられた歌の一つ。生物創造の権能。
 世界を掌握できるというのも、なるほど大言壮語ではないのだろう。
 ラウルは歩き出そうとした。けれども、足が動いてくれなかった。こうしている間にも、いつ動物に襲われるかわかったものではない。
 逃げるべきだ。
 幸い、ラウルはそこそこには素早い。
 民を盾にでもして、一目散に逃走に徹すれば、己の命一つ拾うことなど容易い。戦闘は最小限に抑え、いざというときは預かった剣でも振るえば良い。
 クルスや聖歌隊の団員の期待など、知ったことではない。
 そもそも、ラウル・シーンスという男は誰かに期待されることが大嫌いなのだから。皆、勝手に期待して、勝手に失望していくのだから。
 民を救う理由もない。
 あいつらはいつもラウルに罵倒しか与えてくれなかったではないか。石を投げ付け、呪詛の如き言葉を浴びせてきたではないか。
 あいつらは――見捨てて良い命だ。
 少なくとも、向こうはラウルのことをそう断じているだろう。
 だから、助けに行く必要はない。
 逃げれば良い。
 だが。

 

「……どうして足が動かねえんだよ!」

 

 ラウルの足は一歩も逃げてはくれなかった。
 逃げようと必死に足を動かそうとしても、まるで地面に縫い付けられたかのように自由が効かない。
 身体はしきりに恐怖で震えている。しかし、その震えは禁歌によって創造された動物にも、罪歌七音ミュゼル・オーケストラにも向けられていなかった。
 その恐怖の矛先を理解し、ラウルは愕然と呟いた。
「怖いのか――戦わないことが」
 気付きに従い、足を一歩動かしてみる。すると、足はあっさりと動いた。
 どんなに逃げようとしても進まなかった足は、戦おうという意思の元、簡単に前進を許した。
 そのとき、ラウルの胸に熱い息吹が迸った。
 彼は自分自身に心底呆れ、大きな大きな、笑いに包まれた。
 短剣を握り、剣を腰に。
 目には闘志を。救うという――意地を!
「オレが行っても、何にもなんねえ。当たり前だ。でもよぉ、それは……」
 それは……行かずとも同じことだ。
 だったら、ラウルは自身が満足する道を行けば良い。その結果、何かの奇跡が起こって、誰かが救われれば万々歳だ。
 抗う者にしか――奇跡は起こせない。
 ラウルは気付く。
 どうでも良かったのだ、と。
 例え、自分が誰からも愛されていなくても。母親にすら愛されていないのだとしても。
 そんなことはどうでもいい。
「オレがあんたらのこと嫌いじゃねえんだからよ!」
 結局、ラウルとはそういう男なのだった。誰からも愛されず、けれども、それでも人を憎めない、愚かなお人好しなのだった。
 母親の言葉など、本当のところ、ラウルには関係なかったのだ。
 誰かを大切にしたいというのは、ラウルの何よりも大切な――本心なのだった。
「行くぜ、禁歌……ついでに、ミュゼル・なんちゃら! オレには何にもできねえかもしれねえ!」
 でも、
「無の英雄ラウル・シーンスは最後の最後まで……抗ってやる」
 ラウル・シーンスは何処までも英雄であった。

 

   ▽

 

前回・次回

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反省会

 ラウルの心理面に変化が起きる今回、下手をすると人格が別人のものになったと見られかねない一幕でした。一応、わたくしなりにここに至るまでの諸々を(他者の言葉であったり、彼の行動であったり)で、このようになるよう仕組んでいたつもりでしたが、正直、解りづらいような気がします。

 作者であるわたくしが解っているだけではいけませんよね。

 肝心なのは、わたくしでなく、読者さんなのですから。この意識が決定的に欠如しております。

 

 あと、ラウルが全員を見捨てて逃げてしまおうか、という思考に陥る場面も、もっと丁寧に行くべきでした。ここの方がよっぽど唐突な思考ですし、やるならばもっと徹底してやらねば成りませんでした。なんというか、要素だけ拾っている感じです。

 

 

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