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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』39話

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前回(38話)・次回(40話)

 

目次

 

前回までのあらすじ、というか反省会

 かつて酒屋で戦った男を救出したラウル。彼は無の英雄として、危機的状況にあるフーテを救おうと奔走する。そのような彼に、助太刀する影が現れた。

 という感じのお話が前回でした。

 

 正直に白状すると、これからグダグダが続きます。というのも、ページ制限に引っかかったせいで、かなり大幅のカットをした所為で、雑な展開になってしまっているのです。ページ内に納める技術が不足しているのでしょう。

 あと、不要な部分はカットするか、他の場面と上手く融合させる必要がありましたね。

 今では改善させることも可能なのですが、わたくしがこのお話をブログに載せているのは、失敗を自覚するためです。故に、敢えて改稿はしていません。とても恥ずかしいです……そして、恥ずかしい出来のモノを賞に送ってしまったという事実も羞恥を加速させます。

 みなさんも、このような辱めに合わぬためにも、推敲は頑張りましょう。なんて、言っているわたくしが一番できていないのですが……

 

 ということで、今回はここで反省会を兼ねます。

 本編!

 

龍と奏でる英雄譚――39話

 

   ▽

「きゅる、きゅるる! きゅるるるるるるるる!」
 聴いたことのあるような、妙な鳴き声の接近にラウルの意識は空白に塗り潰された。
 拙い、と思ったときには、既に遅かった。ラウルは押し倒されていた。
「う、うわ!」
 ラウルは背を強く地面に打ち付けてしまった。肺から空気が抜け、空気を求めて喘ぐように呼吸する。そこに、真っ赤な舌が伸びてきた。
 巨大な毛玉だ。
 ラウルはこの毛玉に見覚えがあった。見世物小屋で禁歌を守っていた、羽毛を持つ地竜。ラウルが心の中で勝手にふわふわと呼んでいる個体であった。
 彼女――ふわふわは長年会えなかった恋人の帰還を祝福する婦人のような歓喜にて、ラウルの顔面を舐め回していた。
 唾液の海に溺れそうになりながら、ラウルはどうにか立ち上がる。
 ふわふわの興奮を静める為に、繊細な手付きで頭を撫でてやる。すると、ふわふわは寝転がり、腹を見せて「きゅる」と鳴いた。
「犬かよ、あんた」
 呆れつつ、ラウルはふっと表情を緩めた。しかし、それも刹那のことで、すぐに表情を引き締めると、硬い表情のまま、ふわふわへと言う。
「オレはもう行く。済まねえが、この国の人間を襲うあんたの仲間は手に掛けなくちゃなんねえ。だが、オレはあんたを斬りたくねえ。抵抗せず、黙って道を空けて欲しい」
 ラウルの要請を聴いたふわふわは、けれども一歩たりとも動きはしない。
 不動の体勢だ。
 人間の言葉がわからないのだろうと結論付けて、ラウルはふわふわの隣を通り過ぎようとした。擦れ違う瞬間、ふわふわの牙が煌めいた。
 ふわふわはラウルの肩を甘噛みし、その動きを制止していた。
「なんだ? まだ遊んで欲しいのか? 悪いが今は……」
 と、ふわふわの目を見た。その時、ラウルは全てを悟った。
「あんた、オレに協力してくれんのか?」
 きゅる、とふわふわは肯定の一鳴きを放つ。そうして、彼女はその大きな身体で伏せた。
 乗れ、と言外に告げてきているのだ。
 ラウルは思惑う。
 ふわふわに乗ることができれば、随分と早く動くことができると思われる。ただ、ふわふわを危険に晒してしまうし、彼女の仲間を殺す手伝いをさせるということでもある。
 しかし、そのような躊躇いも一瞬。
 ラウルはドロシーの時に嫌というくらいに学んでいた。ここでラウルがふわふわを置いて行っても、それは解決にはならない。
 例えふわふわを連れて行かなかったとしても、この王都には聖歌隊たちがいる。彼らは動物と戦闘中だ。聖歌隊がふわふわを狙うこともあるかもしれない。
 仲間を殺す覚悟も、ふわふわにはあるのだろう。
 どうしてふわふわにこんなにも懐かれているのかはわからない。懐かれている理由はわからないが、懐かれているという事実がわかっていれば十分だった。
「何というか、昔から動物には好かれる質だが、お前はその中でも飛び抜けてんな」
 好意に甘えてしまおう。
 ラウルはふわふわの背に飛び乗ると、軽く背を撫でた。それがスタートの合図となり、ふわふわが地を蹴り抜く。
 全力のラウルが見せる速さとはまた別の加速。
 風景を置き去りにして、ラウルたちは王都を駆け抜ける。

 

   ▽

 ラウルとふわふわの相性は、控えめに表現して――抜群だった。
 速度は全てふわふわに任せている。
 ラウルの意思を汲み取り、ふわふわは縦横無尽に奔る。
「いたな」
 逃げ惑う人の群れが見えた。彼らは、牙を剥き砲声を上げる猛獣から、命懸けで距離を取らんとしている。野生の速度は、その抵抗を虚しく食い破る。
 牙に食い千切られた人間が、また一人増えた。
 悲鳴が上がる。犠牲者の元へ走り寄ろうとした女性が、別の女性に腕を掴まれ、強制的に前進させられていた。
 ラウルは、凶暴な獣しか狙わない。
 ふわふわのように、人に対して攻撃的でない動物だって当然いるのだ。そのような動物は決して攻撃しない。
 しかし、敵があそこまで凶暴ともなれば話は異なってくる。
 もちろん、あの凶暴な動物だって生きるのに必死なのだろう。悪意あって人を殺傷している訳ではないのだろう。
 だからといって、ラウルは躊躇わない。
 人だって生きる為に必死なのだから。
 どちらが正しいという話ではない。今回の問題はもっと単純である。つまり、どちらが強いか、とそれだけの話だ。
「いけ!」
 掛け声。ふわふわが速度に乗り、風を切り開く。
 ラウルは揺れる肉体を、ふわふわの胴に絡ませた足の力を強めることで安定させる。
 人を襲っているのは、栗色の毛皮に全身を埋め尽くされた、見上げるような巨体だ。前歯が異様に発達しており、長剣を二本、生やしているのではと錯覚する。
「こっちだぞ!」
 ラウルの怒声に応え、獣がこちらへと視線を打ってくる。
 そして、獣が跳ぶ。大量の土埃を舞い上げ、跳ぶような軌道で接近してきた。
 ラウルはふわふわに取り付けた手綱を引き、真っ向勝負を挑む。
 敵の勢いは砲弾であった。ぶつかれば即死は免れないだろう。あの加速と体重による体当たりは、鉄球が高速で飛んできたのも同然だ。
 ラウルの額に汗が伝う。
 だが、ふわふわは主人の指示を疑うことなく、無心で、全速力で敵へと向かっていた。
 良い地竜だ、と思う。
 恐怖はもちろんあるのだろう。だというのに、彼女はそれに飲まれない強さを持っている。何よりも、ラウルを信じてくれていることが、揺れぬ重心から伝わってくる。
 であれば、ラウルもその信頼に応えなくてはならない。
 やがて、敵との距離が零となる。激突の――瞬間、
「ここだ!」
 手綱を裁く。
 命に応じ、ふわふわは即座に、左方向に跳んだ。敵は勢いを殺し切れず、真横を通り過ぎるラウルたちを見逃す。視線が敵と交差する。
 そして、
「――っ!」
 ラウルが短剣を持った手を伸ばす。短剣が獣の肉に突き刺さる。
 ラウルの攻撃の命中を確認したふわふわが、嘶きを放ちその場で回転した。
 ふわふわの持つ獣の膂力とラウルの剣を薙ぐ力が、同時に発揮される。ラウル一人では切り裂けなかったであろう敵の肉が、ふわふわの回転の力を得て――断たれた。
 交錯の終焉は、断首を意味していた。
 ラウルの短剣の斬線に血液の糸が引く。ふわふわは加速の余勢に任せて走り続ける。
 次の戦場に向かう為だ。
 逃げ惑っていた人々が喝采を上げるのを一瞥もせず、ラウルはただ前だけを見ていた。

 

   ▽

 

前回・次回

 前回(38話)・次回(40話)

 

 

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