亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

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ネット小説『龍と奏でる英雄譚』41話

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前回(40話)・次回(42話)

 

目次

 

前回までのあらすじ

 剣の英雄バロックアートは、英雄としての義務を放棄して逃げだそうとしていた。そして、偶然見つけたラウルを、逃走の理由に変えようと刃を剥く。

 自己のことしか考えることができない剣の英雄を、ラウルは打倒することができるのか……という感じです。

 

 では、本編。

 

 龍と奏でる英雄譚――41話

「この距離なら、ボクは容易く彼を殺せるよ」
 バロックアートは冷酷な死刑宣告を述べた後、即座に剣を振りかぶった。剣の英雄による身勝手な死刑が執行される――よりも早く、ラウルが動いた。
 短剣を三本、続けざまに投擲したのだ。剣が空気を斬り、目にも止まらぬ速度となる。
「ふん、小賢しいな」
 ラウルの投擲に、バロックアートは鼻で笑う。視認不可能の斬撃を横凪に発生させ、短剣を悉く両断した。
 ラウルの策をねじ伏せたバロックアートは、勝者の余裕で敗者を見下そうとした。しかし、バロックアートは目を剥いた。
 そこには既に、ラウルがいなかった。
 見渡す周囲、何度も回るようにして敵対者の姿を探る。身体が完全に一回転する直前、バロックアートの瞳はラウルを捉えた。同時、瞳が揺れる。
「――ッ!?」
 バロックアートは咄嗟に剣を袈裟斬りの軌道に乗せ、飛んできた短剣を打ち落とした。
 それが――合図だった。
バロックアートォォ!」
 ラウルの明確な怒気が、バロックアートを襲った。圧倒的殺意は威圧となり、僅かにバロックアートの肉体を鈍らせた。
 ラウルの叫びは、突撃を意味していた。
 ふわふわが、頭部が地に接着してしまうのでは、というフォームで地を蹴った。嘶き、爪が石の地面を砕く。
 前傾姿勢で、ふわふわが野生を解放した。
 一歩ごとに生じる破壊の音色に、バロックアートは剣を振るおうとして――三度投擲された短剣を切り払うことに力を割かされた。
 バロックアートが獣のように吠えた。
「この野郎おおおおおおお!」
 唾液を撒き散らし、人としての尊厳をなげうった叫びは――紛う事なき隙だった。
 バロックアートとの間合いは、このとき、ゼロ距離。
「潰せ!」
 ふわふわの蹴りが、バロックアートの顔面にめり込んだ。バロックアートの華奢な肉体は、嘘のように吹き飛んだ。
 この光景はさながら、酒場での光景の焼き増しのようであった。ただし、役者は異なっているのだが。 
 バロックアートは幾度も地面をボールのように跳ね、その端正だった鼻から無様な鼻血を吹いている。
 全身を汚しつつも、バロックアートはどうにか立ち上がった。
 剣の英雄として得た、人外の耐久力の賜だろう。
「殺す。絶対に殺す」
 バロックアートは焦点の合わぬ目で、殺意を口にした。

 

   ▽

 

前回・次回

前回(40話)・次回(42話)