亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』42話

スポンサーリンク

前回(41話)・次回(43話)

 

目次

 

前回までのあらすじ

 剣の英雄バロックアート・クローバー(このネーミングセンスってどう思われますか? わたくしとしましては、なし、ですね。面白い名前にしようとしたのですが、ちょっと長過ぎ。けれど、それでも気に入ってます)と相まみえるラウル。

 無の英雄と呼ばれるラウルには、特筆に値する権能は存在していない。彼にあるのはナイフと戦闘経験、地道に積み上げてきた訓練、そうして仲間であるふわふわの助力のみ。強力無比を体現したバロックアートに、果たしてラウルは勝利を収めることが出来るのだろうか!!

 

 という感じです。

 本編です。

 

龍と奏でる英雄譚――42話

 

   ▽

 いける、とラウルは思考を切り替えた。
 バロックアート・クローバーは強い。その剣の権能は不可視というのも相まって、何者をも寄せ付けない凶悪性を秘めている。だが、それはあくまで剣の英雄としての力だ。
 では、バロックアート自体の実力はというと、これが意外と大したことはない。
 ラウルの投擲に対する反応を見れば、それは瞭然であろう。
 幾ら速い投擲とは言え、あくまで牽制に過ぎない、小手先の技だ。仮に、ラウルが投擲を放たれたのならば――回避する。
 一方のバロックアートはというと、真っ向から切り伏せてきた。
 実力を誇示したいが故ではないだろう。バロックアートは避けなかったのではない。避けられなかったのである。
(あいつ、戦闘経験が足りてねえ)
 普段ならば、一太刀で片が付くのだ。だからこそ、バロックアートは戦闘を経験していない。奴が永遠行ってきたことは、素振りだったのだ。それだけで勝利できる程に、剣の英雄の権能が強力であったという証左ではあるが、今はそのようなこと塵芥だ。
 ラウルは表情に、挑発を目的とする笑みを深めた。
 すると、それを見咎めたバロックアートが権能を放出した。
 だが。
 ラウルは慣れた手つきで、ふわふわの手綱を打つ。ふわふわが急旋回、バロックアートの権能が空を切り刻む。
 バロックアートが馬鹿のように開口するのに、気味の良いものを感じ、ラウルは再度牽制の短剣を放り捨てる。
「舐めるなあああああああ!」
 素早い二撃。絶叫と同期して、バロックアートの剣筋が迸る。バツを付けるかのような太刀筋に対し、ラウルは平然とふわふわの上から跳躍した。
 ふわふわはその場で伏せる。
 剣は何も捉えなかった。
 呆然と、バロックアートが立ち尽くす。
 ラウルはふわふわの上に跨がると、手綱を奏で前進を命じた。
「見えてるんだよ、雑魚野郎!」
「くっ! あり得ない、あり得ない、あり得ないあり得ないあり得ない!」
 がむしゃらに、バロックアートの剣が世界を切り裂く。
 そのどれもが、ラウルたちを捉えることはない。
 この回避の正体は、ラウルの観察力にあった。彼は、バロックアートの視線から、剣の向きから、声の向く方向から、ありとあらゆる情報から、剣の出現する位置を割り出しているのだ。
 容易いことではない。
 一度失敗すれば、それだけで死は免れない、分の悪い賭け。ラウルはそこに命を賭けた。相対するバロックアートは、何を賭けたというのだろうか。
 奴には力がある。
 その気になるだけで多くを救える力がある。
 ラウルにはない、力がある。
 それがただただ羨ましい、とそう思っていた。しかし、今、こうしてバロックアートと対峙して、ラウルの考えは真逆に傾いだ。
 自分がバロックアートでなくて良かった、と。
 大切なモノを作れず、己の力をひけらかすだけの弱者。
 それこそが剣の英雄バロックアート・クローバーの正体。
 ラウルは哀れな道化に、けれども、明確な怒りをくれてやる。
 ベールディアの気持ちを踏みにじり、民を見捨て、自己保身の為にラウルに牙を剥く愚者に、無の英雄ラウル・シーンスは罰を与えねばならない。
 だから、言う。
「見えてるんだよ、バロックアート。オレは無の英雄だ。知ってるか、無の英雄の権能は、他の英雄の権能を無に帰す力なんだよ! だから『無』の英雄なんだ」
 はったりだ。一から十まで、全てが嘘だ。それでも、ラウルは実際に不可視の攻撃を躱し続けている。ふわふわの速度と持久力がなければ不可能ではあったが、今はきちんと回避に成功し続けている。
 ラウルは表情に愉悦を貼り付け、バロックアートを挑発する。
「仮に、ベールディアがいれば話は違っただろうな。あいつはオレの権能を封じ込められる。あいつがオレのパートナーにされてたのはそういう理由だよ。あんた、おしかったな」
「あのクソ女に、そんな力がある訳がない! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁ!」
 これまた、嘘だ。 
 だが、しかし。これでバロックアートは後悔せざるを得ない。ベールディアという仲間を、己を慕う少女を捨て駒としたことを。まだまだ、ラウルはバロックアートへの攻撃を緩めない。冷酷に、唇を動かした。
「オレはあんたを殺すぜ、バロックアート。大人しく、オレ以外と戦っていれば、命は助かっただろうにな。あんたは相性の悪さを理由に、動物との戦闘を避けたみたいだが――」
 ラウルの持つ善性が足を引っ張り、言葉を躊躇ってしまう。彼は首を振り、その迷いを消すと、口端を吊り上げ、言い放った。
「あんたと本当に相性が最悪だったのは――オレだ」
「……う、ぁ。うぅぅうう、う、うあああああ!」
 バロックアートの理性は、ここで崩壊した。肥大化した自尊心、何処までも深い虚栄心、己が強いのだという自負、己の判断、何もかもを否定されたバロックアートは、意図も容易く心を砕いた。
 戦闘時の緊張に慣れていなかったのもあるのだろう。自身の能力を破られたこともなかったのだろう。
 実際、ラウルとてバロックアート権能は、初見ではどうにもできなかった。
 不意打ちに特化した権能であったのだ。

 

前回・次回

前回(41話)・次回(43話) 

 

反省会

 バロックアートが技術的、精神的に激弱であるというのは、結構前から描いておりました。が、今回のはあまりにもそれが顕著だったかな、と感じております。こういう展開でしかラウルが勝つことができないとはいえ、どうなんでしょうね。

 わたくしとしては、こうしても問題は少なかろうとは思ったのです。

 ただし、わたくし自身の実力不足によって、無理のある展開に感じられるのかもしれません。説明力不足ですね。

 説明力を増やすためには、文字数を増やすのではなく、一撃ですべてを理解できるくらいの単刀直入で簡潔な説明力――要するにまとめる力ですね――が必要です。それを入手するためには、何が必要なのか……他の小説を参考にしつつ、さっさと方向性を決めておきたいですね。

 

 あと、唸り声とか悲鳴とかを台詞として出す方針ですが、ライトノベルであるということに鑑みて、これでも良いような気がしております。もちろん、バランスが大事ですから、織り交ぜて使っていきたいです。

 今日はこれくらいで許してあげましょうかね。これ以上言いますと、わたくしが泣いてしまいます。

 

 

スポンサーリンク

 

前回・次回

前回(41話)・次回(43話)