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亡羊と遊ぶメランコリー――小説家志望・束木志埜のブログ

小説家を目指すわたくしのブログ。色々なことに関心を持ち、できる限りのことをしたく思います。小説・アニメ・漫画等々の感想や日々のこと、創作についても書いていきます。よろしくお願いします!

ネット小説『龍と奏でる英雄譚』43話

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前回(42話)・次回(44話)

 

目次

 

前回までのあらすじ

 バロックアート(剣の英雄)とラウル(主人公)との戦いは続いていく。

 という感じですね。

 正直、バロックアートに尺を割きすぎている感があります。名前も長いですしね。しかし、どうしても他の英雄を出す必要がありましたし、それにヘイト役を任せた以上、ある程度はきちんと決着を付けないといけないのかな、と。

 

 ということで、今回で決着までいきます……バロックアートとは、ですが。

 

 龍と奏でる英雄譚――43話

 

 バロックアートが狂ったように剣を振り乱す。地面が断裂し、周囲の何もかもが真っ二つに姿を変えていく。ここに来て、この行動。
 拙い、としか言えなかった。
(やり過ぎた! ここまであっさり折れちまうとは……)
 ラウルの読みは、バロックアートの理性あってのモノだ。それがなくなるということは、回避の不能を意味する。
 焦ったラウルは、とにかく距離を取ろうと短剣を放った。その短剣は迎撃されることなく、バロックアートの肩にぶつかる。甲冑の所為で、貫くことはできなかった。
 バロックアートは、攻撃が命中した事実にすら気付かず、夢中で剣を振るう。まるで駄々をこねる幼子のように。
 やがて、正気を失ったバロックアートは、馬鹿のようなことを口走った。
「そうだ! 見えていても、反応できない剣を放てば良いだけだ! 足りない足りない足りない! もっと手数を、手数! 剣と一緒に、鞘も使えば……二倍だ!」
 有言実行。
 バロックアートは剣の鞘を抜き去り、直後、
「喰らえ」
 一閃。
 剣の英雄の十八番は、その愚行に対し――応えた。衝撃が生じ、ラウルの肉体がふわふわの背上から弾き飛ばされる。
 咄嗟に防御したが、それでもダメージは殺し切れない。今度はラウルが地面を転がる番であった。ふわふわと分断されたラウルは、それでも受け身を取り、跳ね起きた。身を屈め、短剣を二振り構えて見せる。
 そして、その警戒の態勢が、バロックアートに希望を与えた。バロックアートはすぐに瞳に輝きを取り戻すと、哄笑を浮かべた。
「ふ……ふふふ! やはり、ボクは英雄の器だったようだね。このような危機的場面で、真の力の扱い方を知ったのだから。なるほど、ボクの力はこう使うのか……」
 剣に加えて、鞘までが不可視の攻撃を作り出す。厄介極まりなかった。だが、バロックアートの成長は、これに止まらなかった。
「こうするとどうなる?」
 バロックアートは剣と鞘との二連撃を試した直後、剣底に舌を這わせた。すると、その舌の軌道に従い、不可視の殴打が発生した。
「そうかそうかそうか! つまり、斬っている最中でも、指を剣底に這わせれば、打撃は発生するのか」
 バロックアートの構えが、人のそれを超える。今までは、素人臭さが抜けないものの、普通の剣の構えだった。今のバロックアートは、権能を活かすことだけを念頭に置いている。
 剣の端に摘まむように、軽い力で構えている。いつでも、剣底をなぞれるようにだろう。地獄から上ってきた悪魔が想起される。不安定な構えだ。ふざけているようにしか見えないが、バロックアートの場合、寧ろ、今までがふざけていたようにすら思われる。
「さぁ、始めよう」
 バロックアートの傲慢な声掛けに、ラウルは大きく深呼吸を行った。
 短剣を構え、息を吐き出しながら、彼は応えた。
「ああ――良いぜ」
 曇り空が一転、雨が激しく地面を打ち付ける。
 豪雨の中、二人の英雄は静かに対峙した。視線と視線とが火花を散らし、言外に互いへの殺意の言葉を贈り合う。
 本能が察知する。次の一合が勝負を決めるのだ、と。
 遠くの空で雷鳴が炸裂した。
 同時、二人の英雄は強く踏み込んだ。

 

   ▽

 バロックアートは冷静に剣を薙ぐ。どういう絡繰りかはわかっていないが、ラウルが己の剣撃を視認していることは疑っていない。であれば、見えていてなお、回避不可能の攻撃を見舞うまでだ。
 左の鞘を一閃。合わせ、右の剣底を小指でなぞり上げる。
 見えざる三筋の死線が、ラウルの命を刈る軌道で駆け抜ける。しかし、その必殺と思われた攻撃は、あっさりと回避されてしまう。
 ラウルが全速を行使した。
 それはバロックアートの繰る権能にも似た、視認不可能の大加速。目の前に居た筈の男が、突如消失する。ラウルの速さを侮った。
 音もなく、ラウルが真横に出現した。それを彼が纏う風で知覚したバロックアートは、不敵な笑みの形に、その端正な顔を醜く歪めた。
「来るってわかってたんだよ!」
 バロックアートの本命は――蹴り。
 鋭い蹴りがラウルの腹を捉え、刹那の速度で無の英雄の肉体を真後ろに射出した。ラウルは地面を無様に転がった。
「貴様がボクの剣を躱すのはわかっていたとも! そういう権能を持っているんだろう? 英雄殺しの権能を、さ! だったら、ボクは剣ではなく、体術で屠るだけだ」
 バロックアートは実戦経験に乏しい。戦闘中のブラフの可能性など、微塵も疑っていない。ラウルの言を信じ込んでいるのだ。そして、その盲信が奇襲の察知を是とした。普段のバロックアートでは、おそらく一般人の奇襲も見抜けないだろう。しかし、警戒状態では話も変わってこようというモノだ。
 バロックアートは剣を持っているときのみ、剣の英雄の権能の一部として、身体能力も上昇させている。如何に修業不足の蹴りであろうと、バロックアートの放つ一撃は、十分な速度と威力を内包していた。
 完全に不意を突いたと確信したラウルを捉えるくらいには、バロックアートの身体能力は異常なのだった。
「決着だ。……悔しいがキミとの戦闘は勉強になったよ。これから、ボクは剣の英雄としてますます結果を出すことになるだろう。キミのお陰だよ。ここは素直に認めよう。剣の錆にする、という言葉の意味が身に染みて解った」
 勝者にのみ許された、敗者の健闘を讃える言葉。バロックアートはその台詞を口に出す権利を、たった今手に入れたのだと感じていたのだろう。
 喜悦を堪えるように、全身を抱き、バロックアートは咆吼する。
「この勝負はもう決まったよ。そう――ボクの勝ちだ」
 確かに、バロックアートの言う通り、勝敗は既に決していた。
 ただし、一部の台詞に誤りがある。
 決着の瞬間、勝者は敗者を――見上げていた(、、、、、、)。

「いいや――オレたちの勝ちだ、バロックアート・クローバー」

 何を言ってるんだ、とバロックアートは失笑を浮かべた。頭が狂ってしまったに違いないと判断し、止めを刺そうと剣を振り上げたとき、
「――なっ!?」
 衝撃が背中と頭部を襲った。
 思考外からの致命的な打撃の炸裂を知覚したバロックアートは、遠のく意識をどうにか操作して、衝撃の正体を一瞥することに成功していた。
 そこにいたのは――大量の羽毛に包まれた奇妙な地竜と先程逃げた筈の酒場の店主だった。
 地竜に蹴り付けられ、老人の持つ棒で頭部を殴打されたバロックアートは、これまでのダメージと併せて、意識を保てなくなった。
 剣の英雄――バロックアート・クローバーは、刀剣がその寿命を迎えたときのように、その場でポッキリと膝を折った。

 

   ▽

 

前回・次回

 前回(42話)・次回(44話)

 

反省会

 バロックアートは剣の英雄としての能力を十全に扱いこなせていない……ということを示したかったのですが、どうにも難しいですね。

 バロックアートは遠距離戦ばかりに使いますが、あの権能は近接戦闘に於いて真価を発揮するのです。という設定はともかくとして。 

 

 やはり公募参加のお話は尺の問題で大切な部分を省略しがちです(バロックアートが自分の能力に気が付いていく場面は、もう少し段階を踏んで書きたかったところでした。まあ、長くなりすぎるので、一長一短ありますね)。

 一方で、ライトな面を残すために、ある程度消しても良い部分が抜けない、と。

 こういうバランス感覚を磨く意味でも、公募参加は意義あることですね。

 

 まだまだ反省点ばかりなわたくしではありますが、いずれ(五年後とか)は欠点もある程度は緩和されているでしょう。そう、期待しましょう。

 

 

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